後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
10. 後撰和歌集卷第十
戀歌二
藤原忠房朝臣
女の許にはじめて遣はしける
壬生忠岑
紀友則
源中正
まだ年若かりける女につかはしける
兼覽王
人をいひはじむとて
忠房朝臣
藤原輔文
女のざうしによる/\立ちよりつゝ物などいひてのち
讀人志らず
文遣はせども返事もせざりける女のもとに遣はしける
本院右京
くにもちが音もせざりければ遣はしける
橘敏仲
題志らず
大輔
かへし
敏仲
又
藤原敦忠朝臣
わざとにはあらで時々物いひふれ侍りける女の、心にもあらで人に誘はれてまかりにければとのゐ物にかきつけて遣はしける
藤原顯忠朝臣
あひしりて侍りける女を久しうとはず侍りければいといたうなむわび侍ると人のつげ侍りければ
平時望朝臣
文通はしける女のこと人にあひぬと聞きてつかはしける
小町があね
男のこざりければ遣はしける
枇杷左大臣
題志らず
伊勢
かへし
源等朝臣
人のもとに遣はしける
紀長谷雄朝臣
人につかはしける
讀人志らず
女につかはしける
男に遣はしける
女の許に遣はしける
兼輔朝臣
おのれを思ひ隔てたる心ありといへる女の返事に遣はしける
讀人志らず
遠き所にまかりける道よりやむことなき事によりて京へ人つかはしけるついでに文のはしにかきつけて侍りける
あひしりて侍りける人の許より久しくとはずしていかにぞやまだいきたるやとたはぶれて侍りければ
在原業平朝臣
人のもとにしば/\まかりけれどあひ難く侍りければ物にかきつけ侍りける
元良のみこ
をとこ侍る女をいとせちにいはせ侍りけるを女いとわりなしといはせければ
藤原興風
女の許より心ざしの程をなむえしらぬといへりければ
貫之
いひかはしける女の許よりなほざりにいふにこそあめれといへりければ
大江朝綱朝臣
物のたうびける女の許に文遣はしたりけるに心地あしとて返事もせざりければ又つかはしける
元良親王
おほつぶねに物のたうびつかはしけるを更にきゝ入れざりければ遣はしける
おほつぶね在原棟梁女
かへし
讀人志らず
返事せざりける女の文をからうじてえて
同じ所にて見かはしながら得あはざりける女に
橘公頼朝臣
心ざしありける女に遣はしける
貫之
讀人志らず
兵衞に遣はしける
中將更衣伊衡女
まかり出て御文遣したりければ
延喜御製
御かへし
藤原ちかぬ
題志らず
在原棟梁
貫之
坂上是則
貫之
年久しく通はし侍りける人に遣はしける
平定文
題志らず
きのめのと
かへし
貫之
心ざせる女の家のあたりにまかりていひいれ侍りける
在原元方
題志らず
藤原滋幹
東宮になるとゝいふ戸のもとに女と物いひけるに親の戸をさしてゐて入りにければ又のあしたに遣はしける
讀人しらず
題志らず
延喜御製
長唄のみこの母の更衣さとに侍りけるにつかはしける
等朝臣
題志らず
藤原兼茂朝臣
ある所は志りながらえあふまじかりける人につかはしける
橘實利朝臣
女のもとに遣はしける
讀人志らず
かへし
平定文
人をいひわづらひて遣はしける
おほつぶね
かへし
貫之
女の許にまかりたりけるをたゞにてかへし侍りければいひいれ侍りける
壬生忠峯
あひ志りて侍りける人を久しうとはずしてまかりたりければ門より返し遣しけるに
讀人志らず
をとこの許より今はこと人あんなればといへりければ女にかはりて
かへし
題志らず
右近
人の心かはりにければ
源清蔭朝臣
定國の朝臣の御やす所清蔭の朝臣とみちの國にある所々をつくして歌によみかはして今はよむべき所なしといひければ
讀人志らず
こと女の文をめの見むといひけるに見せざりければ恨みけるに其文の裏にかきつけて遣はしける
源さねあきら
久しうあはざりける女に遣しける
藤原治方
題志らず
大伴黒主
源うかぶ浮
源すぐる
年經ていひわたり侍りける女に
藤原清正
題志らず
讀人志らず
かれがたになりける人に末もみぢたる枝につけてつかはしける
源重光朝臣
女の許より歸りてあしたに遣はしける
清正母
兼輔朝臣にあひはじめて常にしもあはざりける程に
藤原有文朝臣
方ふたがりける頃たがへにまかるとて
大江千古
題志らず
元良のみこ
忍びて通ひ侍りける女の許より狩さうぞく送りて侍りけるにすれる狩衣侍りけるに
あつよしのみこ
題志らず
藤原忠國
忍びてあひわたりける人に
小八條御息所
寛平の帝御ぐしおろさせたまうての頃御帳のめぐりにのみ人はさぶらはせ給ひて近うもめしよせられざりければかきて御帳に結びつけゝる
土左
男のもとに遣はしける
讀人志らず
月をあはれといふはいむなりといふ人の有りければ
男のもとに遣はしける
はじめて人にのたまひつかはしける
貫之
はつかに人を見て遣はしける
讀人志らず
人の家より物見に出づる車を見て心づきにおぼえ侍りければたぞと尋ねとひければいでける家のあるじと聞きてつかはしける
人を思ひかけて心地もあらずやありけむい物もいはずして日くるればおきもあがらずと聞きて此思ひかけたる女の許よりなどかくすき%\しくはといひて侍りければ
心かけて侍りけれどいひつかむ方もなくつれなきさまに見えければつかはしける
をとこの女に文つかはしけるを返事もせで絶えにければ又つかはしける
をとこの旅よりまできて今なむまできつきたるといひて侍りける返事に
をとこの程久しうありてまできてみ心のいとつらさに十二年のやまごもりしてなむ久しうきこえざりつるといひ入れたりければ呼び入れてものなどいひてかへしつかはしけるがまたおともせざりければ
かへし
平定文
人を思ひかけて遣はしける
おほつぶね
かへし
源もろあきらの朝臣
人の許に始めて文遣はしたりけるに返事はなくてたゞ紙をひき結びて返したりければ
かくておこせて侍りけれど宮づかへする人なりければいとまなくて又の朝に床夏の花につけておこせて侍りける
かへし
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