良寛歌集 (Kashu) | ||
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わたしにし身にしありせば今よりはかにもかくにも彌陀のまに/
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わかれにし心の闇に迷ふらしいづれか阿字の君がふるさと
手にさはるものこそなけれ法の道それがさながらそれにありせば
のりの道まことわかたん西東行くもかへるも波に任せて
あわ雪の中に立ちたる三千大千世界又其の中にあわ雪ぞ降る
他力とは野中に立てし竹なれやよりさはらぬを他力とぞいふ
如何なるか苦しきものと問ふならば人をへだつる心とこたへよ
世の中のほだしを何と人とはばたづねきはめぬ心と答へよ
水の上に數かくよりもはかなきはみ法をはかる人にぞありける
世の中に何が苦しと人問はば御法を知らぬ人と答へよ
たへなるや御法の言に及ばねばもて來て説かん山のくちなし
み佛のまこと誓の弘くあらば誘ひ玉へおぢなき我れを
み佛のまこと誓の弘からばいざなひたまへ常世の國に
極樂に我が父母はおはすらん今日膝もとへ行くと思へば
法の道まことは見えで昨日の日も今日も空しく暮しつるかな
法の塵にけがれぬ人はありと聞けどまさ目に一目見しことあらず
いつまでも朽ちやせなましみ佛の御法のために捨てしその身は
御佛のしろしめしけん古を今にうつして見るがたふとさ
心もよ言葉も遠くとゞかねばはしなく御名を唱へこそすれ
ただたのむ三界六道の田長來てみつせの川に鳴きわたるかな
比丘は唯萬事はいらず常不輕菩薩の行ぞ殊勝なりける
僧の身は萬事はいらず行不行菩薩ののりぞ殊勝なりける
業はただ萬事はいらず淨不淨菩薩の行ぞ殊勝なりける
浮草の生ふるみぎはに月かげのありとはここに誰れか知るらん
み草かり國へだつとも同じ世と思ふ心を君たのみなば
み山べのみ雪とくれば谷川によどめる水はあらじとぞ思ふ
靈山の釋迦のみ前に契りてしことな忘れそ世はへだつとも
尊しや祇園精舍の鐘の聲諸行無情の夢ぞさめける
墨染の我が衣手はぬれぬとも法の道しばふみわけて見ん
墨染の我が衣手はぬれぬとも杉のかげ道ふみわけて見ん
露霜に染めて來ぬらん墨衣色にこそ出でねうるほひにけり
今よりは何を頼まんかたもなし教へてたまへ後の世のこと
草の庵に寢てもさめても申すこと南無阿彌陀佛/\
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