University of Virginia Library

【百六十】

おなし内侍に在中将すみける時中将のもとによみてやりける

秋はきを色とる風の吹ぬれは人の心もうたかはれけり

とありけれは返し

秋のゝをいろとる風は吹ぬとも心はかれし草葉ならねは

となんいへりけるかくてすますなりて後中将のもとよりきぬをなんしにをこせたりけるそれにあらはひなとする人なくていとわひしくなんあるなをかならすしてたまへとなん有けれは内侍御心もてあることにこそはあなれ

大ぬさとなりぬる人のかなしきはよるせともなくしかそなくなる

となんいひやりたりける中将

なかるとも何とかみえん手にとりてひきけん人そぬさとしるらん

となむいひける