群書類従卷弟三百八下
検校保己一集
物語部二
大和物語 下
群書類従卷第三百八 (Yamato monogatari) | ||
【百三十九】
先帝の御ときに承香殿の御息所の御さうしに中納言のきみといふ人さふらひけりそれを故兵部卿宮わか男にて一宮と聞えていろこのみ給ひけるころ承香殿はいとちかきほとになんありけるらうありおかしき人々有ときゝ給て物なとのたまひかはしけりさりけるころほひこの中納言の君にしのひてね給ひそめてけりとき/\おはしましてのちこの宮おさ/\とひ給はさりけりさるころ女のもとよりよみてたてまつりける
人をとくあくた川てふつの国のなにはたかはぬきみにそ有ける
かくてものもくはてなく/\やまひになりてこひ奉りけるかの承香殿のまへの松に雪のふりかゝりたりけるを折てかくなん聞え奉りける
こぬ人を松にかゝれる白雪の消こそかへれあはぬ思ひに
とてなんゆめこの雪おとすなとつかひにいひてなむたてまつりける
群書類従卷弟三百八下
検校保己一集
物語部二
大和物語 下
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