University of Virginia Library

【百五十】

昔ならのみかとにつかうまつるうねへありけりかほかたちいみしうきよらにて人々よはひ殿上人なともよはひけれとあはさりけりそのあはぬ心はみかとをかきりなくめてたきものになん思ひ奉りける御門めしてけりさて後又もめさゝりけれはかきりなく心うしとおもひけりよるひる心にかゝりておほえ給つゝこひしくわひしくおほえ給けり御門はめしゝかと事ともおほさすさすかにつねには見え奉るなを世にふましき心ちしけれはよるみそかにいてゝさるさはの池に身をなけてけりかくなけつとも御門はえしろしめさゝりけるを事のついてありて人のそうしけれはきこしめしてけりいといたうあはれかり給て池のほとりにおほみゆきし給て人々に歌よませたまふかきのもとの人丸

わきも子かねくたれ髪を猿沢の池の玉藻とみるそかなしき

とよめるときに御門

さるさはの池もつらしなわきも子かたまもかつかはみつそひなまし

とよみ給ひけりさてこのいけのほとりにはかせさせたまひてなんかへらせおはしましけるとなん