群書類従卷第三百八
検校保己一集
物語部二
大和物語 上
群書類従卷第三百八 (Yamato monogatari) | ||
【六十五】
南院の五郎みかはのかみにて有ける承香殿にありけるいよのこをけさうしけりこんといひけれは御息所の御もとに内へなんまいるといひをこせたりけれは
玉簾うちとかくるはいとゝしくかけをみせしとおもふ也けり
といへりけり又
なけきのみしけきみ山の時鳥木かくれゐてもねをのみそなく
なといひけりかくてきたりけるをいまはかへりねとやらひけれは
しねとてやとりもあへすはやらはるゝいといきかたき心ちこそすれ
返しおかしかりけれとえきかす又雪のふる夜きたりけるをものはいひてよふけぬかへり給ねといひけれはかへりけるほとに戸をさしてあけさりけれは
我はさは雪降空に消ねとや立かへれともあけぬ板戸は
となんいひてゐたりけるかく歌もよみあはれにいひゐたれはいかにせましと思ひてのそきて見れはかほこそなをいとにくけなりしかとなんかたりしとか
群書類従卷第三百八
検校保己一集
物語部二
大和物語 上
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