弥生も末の七日、明ぼのゝ空朧々として、月は在明にて光おさまれる物から不二 の峯幽にみえて、上野谷中の花の梢又いつかはと心ぼそし。
是を矢立の初として、行道なをすゝまず。人々は途中に立ならびて、後かげのみ ゆる迄はと見送なるべし。