是より殺生石に行。館代より馬にて送らる。此口付のおのこ、短冊得させよと乞。や さしき事を望侍るものかなと、
殺生石は温泉の出る山陰にあり。石の毒気いまだほろびず。蜂蝶のたぐひ真砂の色の 見えぬほどかさなり死す。
又、清水ながるゝの柳は蘆野の里にありて田の畔に残る。此所の郡守戸部某の此柳み せばやなど、折々にの給ひ聞え給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日此柳のか げにこそ立より侍つれ。