金葉和歌集 (Kin'yo wakashu) | ||
1. 金葉和歌集卷第一
春歌
修理大夫顯季
堀河院の御時百首の歌めしける時立春の心を詠み侍りける
春宮大夫公實
藤原顯仲朝臣
皇后宮肥後
前齋宮河内
百首の歌の中に初春のこゝろを人にかはりてよめる
太宰大貳長實
初春の心をよめる
修理大夫顯季
正月一日ごろ雪の降りける日つかはしける
春宮大夫公實
かへし
少將公教母
實行卿の家の歌合に霞の心をよめる
藤原顯輔朝臣
大宰大貳長實
霞の心をよめる
修理大夫顯季
百首の歌の中にうぐひすの心をよめる
春宮大夫公實
始聞鶯といへる事をよめる
藤原顯輔朝臣
正月八日春立ちける日鶯のなきけるをきゝてよめる
源雅兼朝臣
あかつき鶯をきくといふ事をよめる
源俊頼朝臣
皇后宮にて人々歌つかうまつりけるに雨中鶯といふ事をよめる
良暹法師
良暹法師忍びてものへまかりけるに右大辨經頼が家の梅さかりにさきければ門にひねもすに立ちくらして夕つかたいひいれ侍りける
前太宰大貳長房
梅花夜芳といへることをよめる
大納言經信
朱雀院に人々まかりて閑庭梅花といへる事をよめる
藤原兼房朝臣
道雅卿の家の歌合に梅花をよめる
源忠季
梅花をよめる
大中臣公長朝臣
子日の心をよめる
大藏卿匡房
百首の歌の中に子日の心をよめる
院御製
柳絲隨風といふ心を
春宮大夫公實
百首の歌の中に柳をよめる
源雅兼朝臣
池邊柳をよめる
前齋院尾張
呼子鳥をよめる
藤原成通朝臣
霞中歸雁といへる事をよめる
藤原經通朝臣
歸雁をよめる
攝政左大臣
花薫風といふ心をよみ侍りける
新院御製
白河の花見の御幸に
太政大臣
大宰大貳長實
人にかはりてよめる
待賢門院兵衛
源雅兼朝臣
院御製
宇治前太政大臣京極の家の御幸の日よませ給ひける
春宮大夫公實
遠山櫻といへる事をよめる
内大臣
松間櫻花といへる事をよめる
左兵衛督實能
左京大夫經忠
山寒花遲といふことを
待賢門院中納言
新院の御かたにて花契遐年といへる事をよめる
藤原顯輔朝臣
源貞輔朝臣
終日尋花といふ事を
堀河院御製
堀河院の御時女房たちを花山の花見せにつかはしたりけるにかへりまゐりて御前にて歌つかうまつりけるに女房にかはりてよませ給うける
源師俊朝臣
太宰大貳長實
山花を翫ぶといへる事をよめる
攝政左大臣
深山花を
修理大夫顯季
人々にさくらの歌十首よませ侍りけるによめる
皇后宮攝津
宇治前太政大臣の家の歌合にさくらをよめる
源俊頼朝臣
内大臣
花爲春友といへる事をよみ侍りける
大藏卿匡房
遙見山花をといへることをよめる
藤原忠隆
大中臣公長朝臣
山花留人といへる事をよめる
前齋宮筑前乳母
堀河院の御時女御の御方の女房あまた花見ありきけるによめる
僧正行尊
人にかはりてよめる
堀河右大臣
後冷泉院の御時皇后宮の歌合に櫻をよめる
大藏卿匡房
月前花を見るといふ心をよめる
太宰大貳長實
顯季卿の家にて櫻の歌十首人々によませ侍りけるによめる
源雅兼朝臣
水上落花といへる事をよめる
左兵衛督實能
落花滿庭といへる事をよめる
源俊頼朝臣
堀河院の御時中宮の御方にて風靜花芳といへる事をつかうまつれる
長實卿母
落花の心をよめる
右兵衛督伊通
落花隨風といふ心をよめる
大納言經信
水上落花といへる心をよめる
藤原成通朝臣
藤原永實
落花衣にちるといへる事をよめる
みくしげ殿
堀川院の御時花のちりたるをかきあつめて大きなる物のふたに山のかたにつませ給ひて中宮の御方に奉らせ給へりけるを宮御覽じて歌よめとおほせありければつかうまつれる
郁芳門院安藝
花の庭にちりつもりたるをみてよめる
隆源法師
夜思落花といへる事をよめる
高階經成朝臣
春ものへまかりけるに山田つくるを見てよみ侍りける
右兵衛督伊通
花をよみ侍りける
下野
後冷泉院の御時月のあかゝりける夜女房御供にて南殿にわたらせ給ひたりけるに、庭の花かつちりておもしろかりけるを御覽じて是をしりたらむ人に見せばやとおほせ事ありて中宮の御かたに下野やあらむとてめしにつかはしたりければまゐりたるを御覽じて、あの花折りてまゐれと仰せ言ありければをりて參りたるをたゞにてはいかゞとおほせ事ありければつかうまつりける
中納言雅定
新院の御方にて殘花風にかうばしといへる事をよめる
權僧正永縁
奈良にて人々百首の歌よみけるにさわらびをよめる
修理大夫顯季
百首の歌の中に杜若を
大納言經信
春の田をよめる
津守國基
苗代をよめる
藤原隆資
後冷泉院の御時弘徽殿の女御の歌合に苗代をよめる
中納言雅定
家の山吹を人々あまたまうできてあそびける次にをりけるを見てよめる
攝政左大臣
水邊款冬
太宰大貳長實
おなじ心を
前太宰大貳長房
後令泉院の御時歌合に山吹をよめる
攝政左大臣家參川
夕べにつゝじを見るといふ心をよめる
大夫典侍
院の北面にて橋上藤花といへる事をよめる
藤原顯輔朝臣
藤花をよめる
津師増覺
坊のふぢの花さかりなりけるをみてよめる
良暹法師
紫藤藏松といへる事をよめる
大納言經信
二條關白の家に池邊藤花といへる事をよめる
修理大夫顯季
百首の歌の中に藤花をよめる
神祇伯顯仲
雨中藤花といへる事をよめる
内大臣家越後
隣家藤花といへる事をよめる
盛經母
大僧都證觀
三月盡の心をよめる
中納言雅定
内大臣
三月盡戀の心をよめる
藤原顯輔朝臣
重服に侍りけるとし三月盡日人のもとより音づれて侍りければつかはしける
源俊頼朝臣
攝政左大臣の家にて人々三月盡のこゝろをよませ侍りけるに
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