University of Virginia Library

墨染の我が衣手のひろくありせば世の中の貧しき人をおほはまし ものを
墨染の我が衣手のひろくありせばあしびきの山のもみぢばおほは ましものを
白雪はいく重もつもれ積らねばとてたまぼこの道ふみわけて君が 來なくに
春といへば天つみ空は霞みそめけり山のはの殘れる雪も花とこそ 見め
岩室の田中に立てる一つ松の木今朝見れば時雨の雨にぬれつつ立 てり
我が宿の葉びろ芭蕉を見に來ませ秋風に破れば惜しけん葉びろの ばせを
さすたけの君と語りし秋の夕べはあらたまの年はふれどもわすら れなくに
草のべの螢となりて千年をもまたんいもが手ゆ黄金の水をたまふ といはば
山かげのまきの板屋に音はせねどもひさがたの雪の降る夜は空に しるけれ