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うつせみのかりのうき世は
ありてなきものともへこそ
白たへの衣にかふる
ぬばだまの髮をもおろす
しかしより天つみ空に
ゐる雲のあとも定めず
行く水のそことも言はず
うち日さす宮も藁屋も
はてぞなきよけくもあれ
あしけくもあらばありなん
思ひしみのなぞもかく
思ひしやまぬ我が思
人知るらめや此の心
誰れにかたらん語るとも
言ふともつきぬありそみは
深しといへど高山は
高くしあれど時しあれば
つくることしありといふものを
かにもかくにもつきせぬものは
我が思はも
世の中に門さしたりと見ゆれどもなどか思のたゆることなき