University of Virginia Library

國上

あしびきの國上の山の
山かげの乙子の宮に
宮づかひ朝な夕なに
岩とこの苔むす道を
ふみならしい行きかへらひ
ます鏡仰ぎて見れば
み林は神さび立てり
落ち瀧津水音さやけし
そこをしもあやにともしみ
五月には山ほととぎす
をちかへり來鳴きとよもし
長月の時雨の時は
もみぢばをひきて手折りて
あらたまのあまた月日を
ここにすごしつ
露霜の秋の紅葉と時鳥いつの世にかはわれ忘れめや