University of Virginia Library

由之老

しきしまの大和の國は
いにしへゆ言あげせぬ國
しかれども我れはことあげす
すぎし夏弟のたまひし
つくり皮いや遠白く
栲のほにありにし皮や
我が家の寶とおもひ
行くときは負ひてもたらし
寝る時は衾となして
つかの間も我が身を去らず
持たりせど奇しきしるしも
いちじろく有らざりければ
此の度は深くかうがへ
こと更に夜の衣の
上にして床にひきはへ
其の上に我が肌つけて
臥しぬれば夜はすがらに
うまいしてほのり/\と
ま冬月春日にむかふ
心地こそすれ
何をもてこたへてよけむたまきはる命にむかふこれのたまもの
しかりとももだにたえねば言あげす勝ちさびをすな我が弟の君