良寛歌集 (Kashu) | ||
おなじうた
いそのかみふりにし御代に
ありといふ猿と兎と
狐とが友を結びて
あしたには野山にあそび
ゆふべには林にかへり
かくしつつ年のへぬれば
ひさがたの天の帝の
ききましてそれがまことを
しらんとて翁となりて
そがもとによろぼひ行きて
申すらくいましたぐひを
ことにして同じ心に
遊ぶてふまこと聞きしが
ごとならば翁が飢を
救へと杖を投げて
いこひしにやすきこととて
ややありて猿はうしろの
林より木の實ひろひて
來りたり狐は前の
川原より魚をくわへて
あたへたり兎はあたりに
飛びとべど何もものせで
ありければ兎は心
異なりとののしりければ
はかなしや兎はかりて
申すらく猿は柴を
刈りて來よ狐はこれを
焚きてたべいふが如くに
なしければ烟の中に
身を投げて知らぬ翁に
あたへけり翁はこれを
見るよりも心もしぬに
久がたの天をあふぎて
うち泣きて土にたふりて
ややありて胸うちたたき
申すらくいまし三人の
友だちはいづれ劣ると
なけれども兎はことに
やさしとてからを抱へて
ひさがたの月の宮にぞ
はふりける今の世までも
語りつぎ月の兎と
いふことはこれがもとにて
ありけりと聞くわれさへも
白たへの衣の袖は
とほりて濡れぬ
ありといふ猿と兎と
狐とが友を結びて
あしたには野山にあそび
ゆふべには林にかへり
かくしつつ年のへぬれば
ひさがたの天の帝の
ききましてそれがまことを
しらんとて翁となりて
そがもとによろぼひ行きて
申すらくいましたぐひを
ことにして同じ心に
遊ぶてふまこと聞きしが
ごとならば翁が飢を
救へと杖を投げて
いこひしにやすきこととて
ややありて猿はうしろの
林より木の實ひろひて
來りたり狐は前の
川原より魚をくわへて
あたへたり兎はあたりに
飛びとべど何もものせで
ありければ兎は心
異なりとののしりければ
はかなしや兎はかりて
申すらく猿は柴を
刈りて來よ狐はこれを
焚きてたべいふが如くに
なしければ烟の中に
身を投げて知らぬ翁に
あたへけり翁はこれを
見るよりも心もしぬに
久がたの天をあふぎて
うち泣きて土にたふりて
ややありて胸うちたたき
申すらくいまし三人の
友だちはいづれ劣ると
なけれども兎はことに
やさしとてからを抱へて
ひさがたの月の宮にぞ
はふりける今の世までも
語りつぎ月の兎と
いふことはこれがもとにて
ありけりと聞くわれさへも
白たへの衣の袖は
とほりて濡れぬ
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