天保元年五月大風の吹きし時のうた
我が宿の垣根に植ゑし
秋萩や一と本すすき
をみなへし紫苑撫子
ふぢばかま鬼の醜草
拔き捨てて水を注ぎて
日覆して育てしぬれば
たまぼこの道もなきまで
はびこりぬ朝な夕なに
行きもどりそこに出で立ち
立ちて居て秋待ち遠に
思ひしに時こそあれ
さ月の月の二十日まり
四日の夕べに大風の
きほひて吹けばあらがねの
土にのべふしひさがたの
あめにみだりて百千々に
なりにしぬれば門さして
足ずりしつついねぞしにける
いともすべなみ
てもすまに植ゑて育てし八千草は風の心に任せ
たりけり