University of Virginia Library

秋のあはれ

夕ぐれに國上の山を
越え來れば高根には
紅葉ちりつつ麓には
鹿ぞ鳴くなる紅葉さへ
時は知るといふを鹿すらも
友をしをしむむべらへや
ましてわれはうつせみの世の
人にしあれば
わが宿を尋ねて來ませあしびきの山のもみぢを手折りがてらに
露霜の秋の紅葉と時鳥いつの世にかはわれ忘れめや
おと宮の森の木下にわれをれば鐸ゆらぐもよ人來るらし