万葉集 (Manyoshu) | ||
1629
[題詞]大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌]
[原文]叩々 物乎念者 将言為便 将為々便毛奈之 妹与吾 手携而 旦者 庭尓出立 夕者
床打拂 白細乃 袖指代而 佐寐之夜也 常尓有家類 足日木能 山鳥許曽婆 峯向尓 嬬
問為云 打蝉乃 人有我哉 如何為跡可 一日一夜毛 離居而 嘆戀良武 許己念者 胸許曽
痛 其故尓 情奈具夜登 高圓乃 山尓毛野尓母 打行而 遊徃杼 花耳 丹穂日手有者 毎
見 益而所思 奈何為而 忘物曽 戀云物呼
[訓読]ねもころに 物を思へば 言はむすべ 為むすべもなし 妹と我れと 手携さはり
て 朝には 庭に出で立ち 夕には 床うち掃ひ 白栲の 袖さし交へて さ寝し夜や 常に
ありける あしひきの 山鳥こそば 峰向ひに 妻問ひすといへ うつせみの 人なる我れ
や 何すとか 一日一夜も 離り居て 嘆き恋ふらむ ここ思へば 胸こそ痛き そこ故に
心なぐやと 高円の 山にも野にも うち行きて 遊び歩けど 花のみ にほひてあれば
見るごとに まして偲はゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを
[仮名],ねもころに,ものをおもへば,いはむすべ,せむすべもなし,いもとあれと,てたづ
さはりて,あしたには,にはにいでたち,ゆふへには,とこうちはらひ,しろたへの,そでさ
しかへて,さねしよや,つねにありける,あしひきの,やまどりこそば,をむかひに,つまど
ひすといへ,うつせみの,ひとなるわれや,なにすとか,ひとひひとよも,さかりゐて,なげ
きこふらむ,ここおもへば,むねこそいたき,そこゆゑに,こころなぐやと,たかまとの,や
まにものにも,うちゆきて,あそびあるけど,はなのみ,にほひてあれば,みるごとに,まし
てしのはゆ,いかにして,わすれむものぞ,こひといふものを
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