万葉集 (Manyoshu) | ||
冬相聞
1655
[題詞]三國真人人足歌一首
[原文]高山之 菅葉之努藝 零雪之 消跡可曰毛 戀乃繁鶏鳩
[訓読]高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬと言ふべくも恋の繁けく
[仮名],たかやまの,すがのはしのぎ,ふるゆきの,けぬといふべくも,こひのしげけく
1656
[題詞]大伴坂上郎女歌一首
[原文]酒杯尓 梅花浮 念共 飲而後者 落去登母与之
[訓読]酒杯に梅の花浮かべ思ふどち飲みての後は散りぬともよし
[仮名],さかづきに,うめのはなうかべ,おもふどち,のみてののちは,ちりぬともよし
1657
[題詞]和歌一首
[原文]官尓毛 縦賜有 今夜耳 将欲酒可毛 散許須奈由米
[訓読]官にも許したまへり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ
[仮名],つかさにも,ゆるしたまへり,こよひのみ,のまむさけかも,ちりこすなゆめ
1658
[題詞]藤<皇>后奉天皇御歌一首
[原文]吾背兒与 二有見麻世波 幾許香 此零雪之 懽有麻思
[訓読]我が背子とふたり見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しくあらまし
[仮名],わがせこと,ふたりみませば,いくばくか,このふるゆきの,うれしくあらまし
1659
[題詞]他田廣津娘子歌一首
[原文]真木乃於尓 零置有雪乃 敷布毛 所念可聞 佐夜問吾背
[訓読]真木の上に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜問へ我が背
[仮名],まきのうへに,ふりおけるゆきの,しくしくも,おもほゆるかも,さよとへわがせ
1660
[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首
[原文]梅花 令落冬風 音耳 聞之吾妹乎 見良久志吉裳
[訓読]梅の花散らすあらしの音のみに聞きし我妹を見らくしよしも
[仮名],うめのはな,ちらすあらしの,おとのみに,ききしわぎもを,みらくしよしも
1661
[題詞]紀少鹿女郎歌一首
[原文]久方乃 月夜乎清美 梅花 心開而 吾念有公
[訓読]久方の月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君
[仮名],ひさかたの,つくよをきよみ,うめのはな,こころひらけて,あがおもへるきみ
1662
[題詞]大伴田村大娘与妹坂上大娘歌一首
[原文]沫雪之 可消物乎 至今<尓> 流經者 妹尓相曽
[訓読]淡雪の消ぬべきものを今までに流らへぬるは妹に逢はむとぞ
[仮名],あわゆきの,けぬべきものを,いままでに,ながらへぬるは,いもにあはむとぞ
1663
[題詞]大伴宿祢家持歌一首
[原文]沫雪乃 庭尓零敷 寒夜乎 手枕不纒 一香聞将宿
[訓読]淡雪の庭に降り敷き寒き夜を手枕まかずひとりかも寝む
[仮名],あわゆきの,にはにふりしき,さむきよを,たまくらまかず,ひとりかもねむ
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