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春雜歌
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春雜歌

1418

[題詞]志貴皇子懽御歌一首

[原文]石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨
[訓読]石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
[仮名],いはばしる,たるみのうへの,さわらびの,もえいづるはるに,なりにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 激 [類] 灑
[_]
[KW],春雑歌,作者:志貴皇子,喜び,植物

1419

[題詞]鏡王女歌一首

[原文]神奈備乃 伊波瀬乃社之 喚子鳥 痛莫鳴 吾戀益
[訓読]神なびの石瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋まさる
[仮名],かむなびの,いはせのもりの,よぶこどり,いたくななきそ,あがこひまさる
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:鏡王女,恋情,慕情,奈良,斑鳩町,地名,動物,枕詞

1420

[題詞]駿河釆女歌一首

[原文]沫雪香 薄太礼尓零登 見左右二 流倍散波 何物之花其毛
[訓読]沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも
[仮名],あわゆきか,はだれにふると,みるまでに,ながらへちるは,なにのはなぞも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:駿河釆女,雪

1421

[題詞]尾張連歌二首 [名闕]

[原文],春山之 開乃乎為<里>尓 春菜採 妹之白紐 見九四与四門
[訓読]春山の咲きのををりに春菜摘む妹が白紐見らくしよしも
[仮名],はるやまの,さきのををりに,はるなつむ,いもがしらひも,みらくしよしも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 黒 → 里 [万葉考]
[_]
[KW],春雑歌,作者:尾張連,野遊び,菜摘み,恋情,妻問い

1422

[題詞](尾張連歌二首 [名闕])

[原文]打<靡> 春来良之 山際 遠木末乃 開徃見者
[訓読]うち靡く春来るらし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば
[仮名],うちなびく,はるきたるらし,やまのまの,とほきこぬれの,さきゆくみれば
[_]
[左注]
[_]
[校異]麾 → 靡 [類][紀][細]
[_]
[KW],春雑歌,作者:尾張連,花,山遊び,野遊び,叙景

1423

[題詞]中納言阿倍廣庭卿歌一首

[原文]去年春 伊許自而殖之 吾屋外之 若樹梅者 花咲尓家里
[訓読]去年の春いこじて植ゑし我がやどの若木の梅は花咲きにけり
[仮名],こぞのはる,いこじてうゑし,わがやどの,わかきのうめは,はなさきにけり
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:阿倍広庭,植物

1424

[題詞]山部宿祢赤人歌四首

[原文]春野尓 須美礼採尓等 来師吾曽 野乎奈都可之美 一夜宿二来
[訓読]春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ野をなつかしみ一夜寝にける
[仮名],はるののに,すみれつみにと,こしわれぞ,のをなつかしみ,ひとよねにける
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,風流,恋情,植物

1425

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

[原文]足比奇乃 山櫻花 日並而 如是開有者 甚戀目夜裳
[訓読]あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも
[仮名],あしひきの,やまさくらばな,ひならべて,かくさきたらば,いたくこひめやも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩,恋情,植物

1426

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

[原文]吾勢子尓 令見常念之 梅花 其十方不所見 雪乃零有者
[訓読]我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば
[仮名],わがせこに,みせむとおもひし,うめのはな,それともみえず,ゆきのふれれば
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,植物

1427

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

[原文]従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日<母> 雪波布利管
[訓読]明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今日も雪は降りつつ
[仮名],あすよりは,はるなつまむと,しめしのに,きのふもけふも,ゆきはふりつつ
[_]
[左注]
[_]
[校異]毛 → 母 [類][紀]
[_]
[KW],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩

1428

[題詞]草香山歌一首

[原文]忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見
[訓読]おしてる 難波を過ぎて うち靡く 草香の山を 夕暮れに 我が越え来れば 山も 狭に 咲ける馬酔木の 悪しからぬ 君をいつしか 行きて早見む
[仮名],おしてる,なにはをすぎて,うちなびく,くさかのやまを,ゆふぐれに,わがこえく れば,やまもせに,さけるあしびの,あしからぬ,きみをいつしか,ゆきてはやみむ
[_]
[左注]右一首依作者微不顕名字
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,東大阪市日下町,生駒山,羈旅,望郷,恋情,地名,植物,枕詞

1429

[題詞]櫻花歌一首[并短歌]

[原文]D嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈<尓>
[訓読]娘子らが かざしのために 風流士の かづらのためと 敷きませる 国のはたて に 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに
[仮名],をとめらが,かざしのために,みやびをの,かづらのためと,しきませる,くにのは たてに,さきにける,さくらのはなの,にほひはもあなに
[_]
[左注](右二首若宮年魚麻呂誦之)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 何 → 尓 [類 ][紀][温]
[_]
[KW],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,予祝,植物

1430

[題詞](櫻花歌一首[并短歌])反歌

[原文]去年之春 相有之君尓 戀尓手師 櫻花者 迎来良之母
[訓読]去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも
[仮名],こぞのはる,あへりしきみに,こひにてし,さくらのはなは,むかへけらしも
[_]
[左注]右二首若宮年魚麻呂誦之
[_]
[校異]歌 [西] 謌
[_]
[KW],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,恋愛,予祝,植物

1431

[題詞]山部宿祢赤人歌一首

[原文]百濟野乃 芽古枝尓 待春跡 居之鴬 鳴尓鶏鵡鴨
[訓読]百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きにけむかも
[仮名],くだらのの,はぎのふるえに,はるまつと,をりしうぐひす,なきにけむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌
[_]
[KW],春雑歌,作者:山部赤人,奈良県,広陵町,地名,植物,動物

1432

[題詞]大伴坂上郎女柳歌二首

[原文]吾背兒我 見良牟佐保道乃 青柳乎 手折而谷裳 見<縁>欲得
[訓読]我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも
[仮名],わがせこが,みらむさほぢの,あをやぎを,たをりてだにも,みむよしもがも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 綵 → 縁 [代匠記初稿本]
[_]
[KW],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,望郷,恋情,羈旅,植物,地名

1433

[題詞](大伴坂上郎女柳歌二首)

[原文]打上 佐保能河原之 青柳者 今者春部登 成尓鶏類鴨
[訓読]うち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなりにけるかも
[仮名],うちのぼる,さほのかはらの,あをやぎは,いまははるへと,なりにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,地名,植物

1434

[題詞]大伴宿祢三林梅歌一首

[原文]霜雪毛 未過者 不思尓 春日里尓 梅花見都
[訓読]霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見つ
[仮名],しもゆきも,いまだすぎねば,おもはぬに,かすがのさとに,うめのはなみつ
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴三林,奈良,春日,地名,植物

1435

[題詞]厚見王歌一首

[原文]河津鳴 甘南備河尓 陰所見<而> 今香開良武 山振乃花
[訓読]かはづ鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花
[仮名],かはづなく,かむなびかはに,かげみえて,いまかさくらむ,やまぶきのはな
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 而 [類][紀]
[_]
[KW],春雑歌,作者:厚見王,飛鳥川,竜田川,地名,植物

1436

[題詞]大伴宿祢村上梅歌二首

[原文]含有常 言之梅我枝 今旦零四 沫雪二相而 将開可聞
[訓読]含めりと言ひし梅が枝今朝降りし沫雪にあひて咲きぬらむかも
[仮名],ふふめりと,いひしうめがえ,けさふりし,あわゆきにあひて,さきぬらむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴村上,植物

1437

[題詞](大伴宿祢村上梅歌二首)

[原文]霞立 春日之里 梅花 山下風尓 落許須莫湯目
[訓読]霞立つ春日の里の梅の花山のあらしに散りこすなゆめ
[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,やまのあらしに,ちりこすなゆめ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴村上,奈良,春日,地名,植物

1438

[題詞]大伴宿祢駿河丸歌一首

[原文]霞立 春日里之 梅花 波奈尓将問常 吾念奈久尓
[訓読]霞立つ春日の里の梅の花花に問はむと我が思はなくに
[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,はなにとはむと,わがおもはなくに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴駿河麻呂,奈良,春日,地名,植物

1439

[題詞]中臣朝臣武良自歌一首

[原文]時者今者 春尓成跡 三雪零 遠山邊尓 霞多奈婢久
[訓読]時は今は春になりぬとみ雪降る遠山の辺に霞たなびく
[仮名],ときはいまは,はるになりぬと,みゆきふる,とほやまのへに,かすみたなびく
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:中臣武良自,季節

1440

[題詞]河邊朝臣東人歌一首

[原文]春雨乃 敷布零尓 高圓 山能櫻者 何如有良武
[訓読]春雨のしくしく降るに高円の山の桜はいかにかあるらむ
[仮名],はるさめの,しくしくふるに,たかまとの,やまのさくらは,いかにかあるらむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:河辺東人,高円山,奈良,地名,植物

1441

[題詞]大伴宿祢家持鴬歌一首

[原文]打霧之 雪者零乍 然為我二 吾宅乃苑尓 鴬鳴裳
[訓読]うち霧らひ雪は降りつつしかすがに我家の苑に鴬鳴くも
[仮名],うちきらし,ゆきはふりつつ,しかすがに,わぎへのそのに,うぐひすなくも
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴家持,動物,季節

1442

[題詞]大蔵少輔丹比屋主真人歌一首

[原文]難波邊尓 人之行礼波 後居而 春菜採兒乎 見之悲也
[訓読]難波辺に人の行ければ後れ居て春菜摘む子を見るが悲しさ
[仮名],なにはへに,ひとのゆければ,おくれゐて,はるなつむこを,みるがかなしさ
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:丹比屋主,菜摘み,大阪,恋情,地名

1443

[題詞]丹比真人乙麻呂歌一首 [屋主真人之第二子也]

[原文]霞立 野上乃方尓 行之可波 鴬鳴都 春尓成良思
[訓読]霞立つ野の上の方に行きしかば鴬鳴きつ春になるらし
[仮名],かすみたつ,ののへのかたに,ゆきしかば,うぐひすなきつ,はるになるらし
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:丹比乙麻呂,野遊び,動物,季節

1444

[題詞]高田女王歌一首 [高安之女也]

[原文]山振之 咲有野邊乃 都保須美礼 此春之雨尓 盛奈里鶏利
[訓読]山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨に盛りなりけり
[仮名],やまぶきの,さきたるのへの,つほすみれ,このはるのあめに,さかりなりけり
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:高田女王,大原高安,高安王,植物,叙景

1445

[題詞]大伴坂上郎女歌一首

[原文]風交 雪者雖零 實尓不成 吾宅之梅乎 花尓令落莫
[訓読]風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花に散らすな
[仮名],かぜまじり,ゆきはふるとも,みにならぬ,わぎへのうめを,はなにちらすな
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:坂上郎女,比喩,植物

1446

[題詞]大伴宿祢家持<春>雉歌一首

[原文]春野尓 安佐留雉乃 妻戀尓 己我當乎 人尓令知管
[訓読]春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ
[仮名],はるののに,あさるきぎしの,つまごひに,おのがあたりを,ひとにしれつつ
[_]
[左注]
[_]
[校異]養 → 春 [西(訂正)][紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:大伴家持,動物

1447

[題詞]大伴坂上郎女歌一首

[原文]尋常 聞者苦寸 喚子鳥 音奈都炊 時庭成奴
[訓読]世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ
[仮名],よのつねに,きけばくるしき,よぶこどり,こゑなつかしき,ときにはなりぬ
[_]
[左注]右一首天平四年三月一日佐保宅作
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],春雑歌,作者:坂上郎女,動物,季節