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9. 千載和歌集卷第九
哀傷歌
中務卿具平のみこ
花のさかりに藤原爲頼などともにて石藏にまかれりけるを中將宣方の朝臣などか斯と侍らざりけむ後の度には必侍らむと聞えけるを其年中將も爲頼も身まかりにける又の年彼花を見て大納言公任につかはしける
前大納言公任
かへし
藤原範永朝臣
主なき家の櫻を見てよめる
和泉式部
彈正尹爲尊のみこにおくれ侍りてよめる
藤原道信朝臣
煩ひ侍りけるがいとゞよわくなりにけるにいかなる形見にか有けむ、山吹なるきねをぬぎて女につかはし侍りける
又云ふ、身まかりて後女の夢にみえてかくよみ侍りけるとも。
藤原頼孝
中將道信の朝臣身まかりにけるを送りをさめての朝によめる
花山御製
世のはかなき事をよませ給うける
源道濟
一條院かくれ給うての又の年彼院の花を見てよめる
道命法師
親しかりける人身まかりにけるによめる
藤原長能
花山院かくれさせ給うての頃よみ侍りける
上東門院
後一條院かくれさせ給うての年時鳥のなきけるによませ給うける
辨乳母
枇杷どのゝ皇太后宮わづらひ給ひける時所をかへて心みむとて外にわたり給へりけるをかくれ給ひて後陽明門院一品親王と申しける枇杷殿にかへり給へりけるにふかき御ちやうの内に菖蒲くす玉などの枯れたるが殘りけるを見てよみ侍りける
江侍從
かへし
大貳三位
大納言長家大納言齋信の女に住み侍りけるを女身まかりける頃法住寺にこもりゐて侍りけるにつかはしける
大納言長家
かへし
承香殿女御
一條院かくれさせ給へりける年の秋月をみてよみ侍りける
小辨命婦
後一條院四月にかくれさせ給ひける年の九月に中宮又かくれ給ひにける四十九日末つかた宮々上東門院に渡り給ひ侍りける日人々別をしみけるによみ侍りける
前中宮宣旨
同じ年の冬御禊大甞會など過ぎて十二月つごもり大納言長家二條院の、一品内親王と申しける時まゐりて侍りけるによみ侍りける
大納言長家
かへし
紫式部
遠き所に行きにける人のなくなりにけるをおやはらからなど都に歸り來て悲しき事いひたるに遣はしける
藤原道信朝臣
恒徳公かくれ侍りて後かの常に見侍りける鏡の物の中に侍りけるをみてよみける
赤染衛門
上東門院に參りて侍りけるに一條院の御事などおぼし出でたる御氣色なりける朝奉りける
上東門院
御かへり事
源實基朝臣
あがたに侍りける程に京なる女身まかりぬときゝていそぎのぼり侍りける道にてよめる
平雅康
藏人に侍りける時おやの思ひになりにける秋、上のをのこども嵯峨野に花見にゆくときゝてつかはしける
前中納言匡房
右衞門督基忠かくれ侍りて後かの家につかはしける
藤原顯綱朝臣
後三條院かくれさせ給うて諒闇のころよみ侍りける
權中納言俊忠
少將に侍りける時大納言忠家かくれ侍りける後五月五日中納言國信、中將に侍りける時消息して侍りけるついでに遣はしける
中納言國信
返し
藤原基俊
女におくれて歎き侍りける頃肥後がもとよりとひ侍りけるに遣はしける
贈皇后茨子かくれ侍りにける後、硯の箱など取りしたゝめけるに物に書き付けておかれ侍りける歌
藤原有信朝臣
あひしれりける女身まかりにける時月をみてよめる
慶範法師
人のわざしける導師にて諷誦文よみけるに歌の侍りければよみ侍りける
崇徳院御製
待賢門院かくれさせ給うて後御忌はてゝかた%\にかへらせ給ひける日
上西門院兵衞
御かへし
靜嚴法師
語らひけるわらはの思はずに疎くなりにける後なくなりにけるを人のとぶらひて侍りければよめる
天臺座主勝範
服に侍りける時ある上人の來れりけるが墨染の袈裟を忘れてとりに遣したりけるにつかはすとてよめる
鳥羽院御製
わづらはせ給うける時鳥羽殿にて時鳥の鳴きけるをきかせ給うてよませ給うける
久我の内のおほいまうち君
美福門院の御服にて侍りけるを宣旨にてぬぎ侍るとてよめる
大宮前太政おほいまうち君
中納言伊實六條の家にて身まかりにけるを後のわざなどはてゝ九條の堂に歸り侍りける時はしらにかきつけ侍りける
花薗左大臣室
權大納言實家
大炊御門右大臣かくれ侍りて後七月七日母の三位の許に消息のついでに遣し侍りける
三位
かへし
仁和寺入道法親王
待賢門院かくれさせ給ひて後法金剛院にて時鳥の鳴き侍りけるに
法印澄憲
二條院かくれさせ給ひて御わざの夜よみ侍りける
右のおほいまうち君
大炊御門右大臣身まかりて後かの志るしおきて侍りける私記どもの侍りけるを見てよみ侍りける
民部卿成範
母の二位身まかりて後よみ侍りける
藤原貞憲朝臣
母の服に侍りける程に又紀伊三位身まかりにける時よみ侍りける
右京大夫秀能
忍びてもの申しける女身まかりにける時よめる
僧都印性
後入道法親王かくれ侍りて後入りがたまで月をみてよみ侍りける
左京大夫脩範
親の墓にまかりて侍りけるに志らぬつかどもの多く見え侍りければよめる
僧都範玄
奈良に侍從と申しけるわらはのいづみ川に身をなげて侍りければよめる
法印成清
花薗左大臣の家に童にて侍りけるを、笙を教へ侍るとて給へりける笛を年經て後かのために供養し侍りける時笛にそへて侍りける
靜縁法師
わづらふこと侍りける時母にさきだゝむことなげき思ひ侍りけるをそのたびおこたりて後又母身まかりける時よめる
藤原親盛
周防國に父のまかりくだりけるが彼國にて身まかりにけるときゝて急ぎ下りける時よめる
覺蓮法師
仁和寺法親王蓮花門院にてかくれ侍りける後月忌の日かの墓所にまかりけるに山に雲かゝりて心ぼそく侍りければよめる
法眼長眞
父の中納言顯長が墓所の堂深草の里に侍りけるにまかりてよめる
顯昭法師
母の身まかりにける時よめる
圓位法師
同行の上人西住秋の頃わづらふことありて限に見え侍りければよめる
寂然法師
西住法師身まかりける時をはり正念なりけるよし聞きて圓位法師の許につかはしける
圓位法師
かへし
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