詞花和歌集 (Shika wakashu) | ||
5. 詞花和歌集卷第五
賀
入道前太政大臣
一條院上東門院に行幸せさせ給ひけるに
君が代にあふ隈川の底清み千年をへつゝすまむとぞ思ふ
伊勢大輔
正月一日子生みたる人にむつぎつかはすとてよめる
珍しくけふたち初むる鶴の子は千代の襁褓を重ぬべき哉
大中臣能宣朝臣
一條左大臣の家に障子にすみよしのかたかきたる所によめる
過ぎ來にし程をば捨てつ今年より千代は數へむ住吉の松
匡房
京極前太政大臣の家に歌合志侍りけるによめる
君が代は曇りもあらじ三笠山嶺に朝日のさゝむかぎりは
能因法師
長元八年宇治前太政大臣の家の歌合によめる
君が代は白雲かゝる筑波嶺の峰のつゞきの海となるまで
赤染衛門
題志らず
榊葉を手に取持ちて祈りつる神の代よりも久しからなむ
中務
三條太政大臣賀の屏風の繪に花見てかへる人かきたるところによめる
あかでのみ歸ると思へば櫻花折べき春ぞ盡きせざりける
清原元輔
ある人の子三人にかうぶりせさせたりけるに又の日つかはしける
松島の磯に群居る芦たづの己がさま%\見えし千代かな
後冷泉院御製
天喜四年四月晦日后の宮の歌合によませ給ひける
長濱の眞砂の數もなにならじつきせず見ゆる君か御代哉
前大納言公任
上東門院の御屏風に十二月つごもりのかたかきたる所によめる
一年をくれぬと何か惜むべき盡せぬ千代の春をまつには
惠慶法師
河原院に人々まかりて歌合志侍りけるに松臨池といふことを
誰にとか池のこゝろも思ふらむそこに宿れる松の千年を
讀人志らず
後三條院の住吉まうでによめる
君が代の久しかるべきためしにや神も植ゑけむ住吉の松
大納言經信
としつなにぐして住吉にまうでゝよめる
住吉のあら人神のひさしさに松もいくたび生ひ替るらむ
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