詞花和歌集 (Shika wakashu) | ||
10. 詞花和歌集卷第十
雜下
源俊頼朝臣
みやこに住みわびてあふみにたながみといふ所にまかりてよめる
女どもの澤に若菜摘むを見てよめる
藤原公重朝臣
四位して殿上おりて侍りける比鶴鳴皐といふことをよめる
右近中將教長
新院六條殿におはしましける時月あかくはべりける夜御舟にめして月前言志といふ事をよませ給ひけるに
藤原實方朝臣
櫻の花のちるを見てよめる
増基法師
世のなか騒がしくきこえける頃よめる
源親元
秋の野をすぎまかりけるに尾花の風になびくを見てよめる
四條中宮
心ちれいならずおぼされける頃よみ給ひける
花山院御製
世の中はかなくおぼえさせ給ひける頃よませたまひける
和泉式部
いりあひの鐘の聲をきゝてよめる
藤原教良母
大納言忠教身まかりける後の春鶯のなくを聞きてよめる
法橋清昭
はかなき事のみ多く聞えける頃よめる
神祇伯顯仲
夏の夜はしに出でゐてすゞみ侍りけるに夕闇のいとくらくなりければよめる
良暹法師
病おもくなり侍りけるころ雪のふるを見てよめる
赤染衛門
大江擧周の朝臣おもくわづらひて限に見えはべりければよめる
大僧正行尊
病重くなり侍りければ三井寺へまかりて京の坊にうゑおきて侍りける八重紅梅を、今は花咲きぬらむみばやといひ侍りければをりに遣はして見せければよめる
其の後程なく身まかりにけるとぞ。
讀人志らず
人の椎をとらせて侍りければ
増基法師
題志らず
大江以言
良暹法師
大原に住みはじめけるころ俊綱の朝臣のもとへいひ遣はしける
賢智法師
題志らず
太政大臣
この集撰ぶとて家集こひて侍りければよめる
大藏卿匡房
周防の内侍あまになりぬときゝていひ遣しける
沙彌蓮寂
法師になりてのち左京大夫顯輔が家にて歸雁をよめる
讀人志らず
題志らず
太皇太后宮肥後
藤原實宗常陸介に侍りける時大藏省のつかひども嚴しくせめければ匡房にいひて侍りければ遠江にきりかへて侍りければいひ遣しける
大中臣能宣朝臣
下臈にこえられて堀川の關白の許に侍りける人のもとへおとゞにも見せよとおぼしくて遣はしける
津守國基
白河院位におはしましける時修理大夫顯季につけて申さする事侍りけるを宣旨のおそく下りければその冬ごろいひ遣はしける
修理大夫顯季
かへし
大納言成通
新院位におはしましける時うへのをのこどもをめして述懷の歌よませ給ひけるに白川院の御事忘るゝ時なくおぼえ侍りければ
大藏卿匡房
堀河院の御時百首の歌奉りける中に
源義國妻
むすめのさうしかゝせける奥にかきつけゝる
關白前太政大臣
左京大夫顯輔近江守に侍りける時とほきこほりにまかりけるに便につけていひ遣はしける
新院位におはしましゝ時海上遠望といふことをよませ給ひけるによめる
藤原家經朝臣
後冷泉院の御時大甞會の主基方の御屏風に備中國たかくら山にあまたの人花摘みたるかた書きたる所によめる
左京大夫顯輔
今上の大甞會の悠紀方の御屏風に、近江國いたくらの山田にいねをおほくかりつめり。これを人見たるかたかきたる所をよめる
曾禰好忠
圓融院の御時堀河院に二たび行幸せさせ給ひけるによめる
宇治前太政大臣
有馬の湯に罷たりけるによめる
道明法師
熊野へまうでけるみちにて月をみてよめる
帥前内大臣
播磨に侍りける時月をみてよめる
藤原家經朝臣
信濃守にてくだりけるに風越のみねにてよめる
藤原隆經朝臣
藤原頼任の朝臣美濃守にて下り侍りける供にまかりてその後年月をへてかの國の守になりてくだり侍りて垂井といふ泉を見てよめる
大江正言
帥前内大臣はりまへまかりけるともにて川じりをいづる日よみ侍りける
前大納言公任
三條太政大臣身まかりて後月をみてよめる
堀川右大臣
むすめにおくれて歎き侍りける人に月のあかゝりける夜いひつかはしける
藤原相如
あはだの右大臣身まかりける頃よめる
圓融院御製
堀川の中宮かくれ給ひてわざの事はてゝのあしたによませ給ひける
少將義孝
一條攝政身まかりにけるころよめる
待賢門院安藝
子のおもひに侍りけるころ人のとひて侍りければよめる
清原元輔
兼盛子におくれて歎くときゝていひ遣はしける
天暦のみかどかくれおはしまして七月七日御忌果てゝちり%\にまかり出でけるに女房の中におくり侍りける
讀人志らず
かへし
神祇伯顯仲
むすめにおくれて服着侍るとてよめる
赤染衛門
大江匡衡身まかりて又の年の春花を見てよめる
藤原有信朝臣
後冷泉院の御時藏人にて侍りけるに御門かくれおはしましにければよめる
讀人志らず
男におくれてよめる
人の四十九日の誦經文にかきつけゝる
四條中宮
にひまゐりして侍りける女のまへゆるされて後程なく身まかりにければ
讀人志らず
稻荷のとりゐにかきつけて侍りける
おやの所分をゆゑなく人におしとられけるを此の事ことわり給へといなりにこもりて祈り申しける法師の夢に社の中よりいひ出し給ひける歌
選子内親王
加茂のいつきときこえける時に西にむかひてよめる
神祇伯顯仲
信解品周流諸國五十餘年といふ心をよめる
讀人志らず
即身成佛といふ事をよめる
關白前太政大臣
舍利講のついでに願成佛道の心を人々によませ侍りけるによめる
左京大夫顯輔
登蓮法師
常在靈鷲山の心をよめる
詞花和歌集 (Shika wakashu) | ||