万葉集 (Manyoshu) | ||
正述心緒
2841
[題詞]正述心緒
[原文]我背子之 朝明形 吉不見 今日間 戀暮鴨
[訓読]我が背子が朝明の姿よく見ずて今日の間を恋ひ暮らすかも
[仮名],わがせこが,あさけのすがた,よくみずて,けふのあひだを,こひくらすかも
2842
[題詞](正述心緒)
[原文]我心 等望使念 新夜 一夜不落 夢見<与>
[訓読]我が心ともしみ思ふ新夜の一夜もおちず夢に見えこそ
[仮名],あがこころ,ともしみおもふ,あらたよの,ひとよもおちず,いめにみえこそ
2843
[題詞](正述心緒)
[原文]<愛> 我念妹 人皆 如去見耶 手不纒為
[訓読]愛しと我が思ふ妹を人皆の行くごと見めや手にまかずして
[仮名],うつくしと,あがおもふいもを,ひとみなの,ゆくごとみめや,てにまかずして
2844
[題詞](正述心緒)
[原文]<比>日 寐之不寐 敷細布 手枕纒 寐欲
[訓読]このころの寐の寝らえぬは敷栲の手枕まきて寝まく欲りこそ
[仮名],このころの,いのねらえぬは,しきたへの,たまくらまきて,ねまくほりこそ
2845
[題詞](正述心緒)
[原文]<忘>哉 語 意遣 雖過不過 猶戀
[訓読]忘るやと物語りして心遣り過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり
[仮名],わするやと,ものがたりして,こころやり,すぐせどすぎず,なほこひにけり
2846
[題詞](正述心緒)
[原文]夜不寐 安不有 白細布 衣不脱 及直相
[訓読]夜も寝ず安くもあらず白栲の衣は脱かじ直に逢ふまでに
[仮名],よるもねず,やすくもあらず,しろたへの,ころもはぬかじ,ただにあふまでに
2847
[題詞](正述心緒)
[原文]後相 吾莫戀 妹雖云 戀間 年經乍
[訓読]後も逢はむ我にな恋ひそと妹は言へど恋ふる間に年は経につつ
[仮名],のちもあはむ,われになこひそと,いもはいへど,こふるあひだに,としはへにつ
つ
2848
[題詞](正述心緒)
[原文]不直<相> 有諾 夢谷 何人 事繁 [或本歌曰 <寤>者 諾毛不相 夢左倍]
[訓読]直に会はずあるはうべなり夢にだに何しか人の言の繁けむ [或本歌曰 うつつ
にはうべも逢はなく夢にさへ]
[仮名],ただにあはず,あるはうべなり,いめにだに,なにしかひとの,ことのしげけむ,[う
つつには,うべもあはなく,いめにさへ]
2849
[題詞](正述心緒)
[原文]烏玉 彼夢 見継哉 袖乾日無 吾戀矣
[訓読]ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを
[仮名],ぬばたまの,そのいめにだに,みえつぐや,そでふるひなく,あれはこふるを
2850
[題詞](正述心緒)
[原文]現 直不相 夢谷 相見与 我戀國
[訓読]うつつには直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふらくに
[仮名],うつつには,ただにはあはず,いめにだに,あふとみえこそ,あがこふらくに
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