University of Virginia Library

かなしき(七首)

世の中の玉も黄金も何かせん一人ある子に別れぬる身は
かしの實の唯一人子に捨てられて我が身ばかりとなりにしものを
思ふぞへあへず我が身のまかりなば死出の山路にけだしあはんか も
なげけどもかひなきものをこりもせで又も涙のせき來るはなぞ
子供らを生まぬ先とは思へども思ふ心はしばしなりけり
花見てもいとど心は慰まずすぎにし子らがことを思ひて
あさと出て子らがためにと折る花は露も涙もおきぞまされる