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良寛歌集 (Kashu) | ||
○
ますらをのふみけん世々の古道は荒れにけるかも行く人なしに
古の人のふみけんふる道はあれにけるかも行く人なしに
むらぎもの心をやらん方ぞなきあふさきるさに思ひまどひて
移り行く世にし住へばうつそみの人の言のはうれしくもなし
聞かずしてあらましものを何しかも我れにつげつる君がよすがを
古のますらたけをの形見ぞと見つつしのばん年はふるとも
あま人のつたふみけしかひさがたの雲路を通ふ心地こそすれ
越路なる三島の沼に棲む鳥も羽がひ交はしてぬるてふものを
水鳥の行くもかへるもあとたえてふれども道は忘れざりけり
横崎のすたべをろがみ石の上古りにしことを忍びつるかも
何をもて答へてよけんたまきはる命にむかふこれのたまもの
あたらねばはづるともなき梓弓空を目あてにはなつもの故
いざさらばあはれくらべん越路なる乙若の春と有明の秋
教とは誰が名づけけんしら絲の賤がをだまきまきもどし見よ
水くきの筆をも持たぬ身ぞつらき昨日は寺へ今日は醫者殿
筆持たぬ身はあはれなり杖つきて今朝もみ寺の門たたきけり
人は皆碁をあげたりと言ふなれど我れは思案をせぬとこそすれ
白浪のよする渚を見渡せば末は雲井につづく海原
立田山紅葉の秋にあらねどもよそにすぐれてあはれなりけり
言の葉もいかがかくべき雲霞晴れぬる今日の不二の高根に
富士も見え筑波も見えて隅田川瀬々の言の葉たづねても見ん
大御酒を三杯いつ杯たべ醉ひぬゑひての後は待たでつぎける
からうたをつくれ/\と君はいへど君し飮まねば出來ずぞありけ
る
白雪に道はかくれて見えずともおもひのみこそしるべなりけれ
うなばらをふりさけ見つつせこ待つと石となりしは吾が身なりけ
り
良寛歌集 (Kashu) | ||