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良寛歌集 (Kashu) | ||
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ゆくさくさ見れどもあかず石瀬なる田中に立てる一つ松かな
岩室の田中の松は待ちぬらし我れ待ちぬらし田中の松は
松の尾の松の間を思ふどちありきしことは今もわすれず
伊夜日子の杉のかげ道ふみわけて我れ來にけらし其のかげ道を
八幡の森の木下に子供らと遊ぶ夕日のくれまをしかな
籠田より村田の森を見渡せば幾世經ぬらん神さびにけり
木の間より角田の沖を見わたせばあまのたく火の見えかくれつつ
浦浪のよするなぎさを見わたせば末は雲井につづく海原
ふる里へ行く人あらば言づてん今日近江路を我れこえにきと
いく度か參る心はかつを寺ほとけの誓たのもしきかな
高砂の尾の上の鐘の聲きけば今日の一と日は暮れにけるかも
つの國のなにはのことはいざ知らず木の下やどに三人ふしけり
夢の世に又夢結ぶ草枕寢覺淋しく物思ふかな
しをりして行く道なれど老いぬればこれやこの世のなごりなるら
ん
旅衣野山をこえて足たゆく今日の一と日も暮れにけるかな
つれ%\にながめくらしぬ古寺の軒ばをつたふ雨をききつつ
よしや君いかなる旅の末にても忘れ給ふな人の情を
都鳥隅田川原になれ住みてをちこち人に名やとはるらん
草枕ねざめ淋しき山里に雲井おなじき月を見るかも
良寛歌集 (Kashu) | ||