冬ごもり
あしびきの國上の山の
冬ごもり日に/\雪の
降るなべに往き來の道の
跡も絶えふる里人の
音もなしうき世をここに
門さして飛騨のたくみが
打つ繩の只一筋の
岩清水そを命にて
あらたまの今年の今日も
暮しつるかも
わが宿は國上山もと冬ごもり往き來の人のあと方もなし
今よりはふる里人の音もなし峰にも尾にも雪の積れば
山かげのまきの板屋に音はせねど雪の降る日は空にしるけり
柴の戸の冬の夕べの淋しさはうき世の人のいかで知るべき
小夜ふけて岩間の瀧津音せぬは高ねのみ雪降り積るらし
み山べの雪ふりつもる夕ぐれは我が心さへけぬべくおもほゆ