University of Virginia Library

○(この歌の後半次の如きもあり)

‥‥‥‥‥山の紅葉は
ちりすぎぬふるさとの
あれたる宿にひとりわが
ありがてぬれば玉だすき
かけてしぬびてさす竹の
君も逢ふやと夕づつの
かゆきかくゆきうち見れば
いほへ山み雪ふりしき
とのぐもり袖さへさえて
我が思ふ千重の一重も
なぐさむる心はなしに
からにしきたちかへり來て
草のいほにわびつつぞをる
逢ふよしをなみ
秋山の紅葉はすぎぬ今よりは何によそへてこの日くらさん
今更に死なば死なめと思へども心にそはぬいのちなりけり