University of Virginia Library

人にかはりて

手を折りてうち數ふれば
我がせこに別れにしより
今日までに八としの年を
つれもなく荒れたる宿に
たをや女が一人し住めば
慰むることとはなしに
嘆のみ積り/\て
かげのごとわが身はなりぬ
今更に世にはありとも
有りのみの有りがひなしと
思ひこそ一日に千度
死なめとは思ひはすれど
二人の子見るに心の
ほださへてかにもかくにも
言はんすべせんすべ知らず
こもり居てねのみし泣かゆ
朝な夕なに
ますかゞみ手にとり持ちて今日の日もながめくらしつかげと姿と
我がごとやはかなきものは又もあらじと思へばいとどはかなかり けり
何事も皆昔とぞなりにける花に涙をそそぐ今日かも