万葉集 (Manyoshu) | ||
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[題詞]挽歌
[原文]<挂>纒毛 文恐 藤原 王都志弥美尓 人下 満雖有 君下 大座常 徃向 <年>緒長
仕来 君之御門乎 如天 仰而見乍 雖畏 思憑而 何時可聞 日足座而 十五月之 多田波思
家武登 吾思 皇子命者 春避者 殖槻於之 遠人 待之下道湯 登之而 國見所遊 九月之
四具礼<乃>秋者 大殿之 砌志美弥尓 露負而 靡<芽>乎 珠<手>次 懸而所偲
三雪零 冬
朝者 刺楊 根張梓矣 御手二 所取賜而 所遊 我王矣 烟立 春日暮 喚犬追馬鏡 雖見不
飽者 万歳 如是霜欲得常 大船之 憑有時尓 涙言 目鴨迷 大殿矣 振放見者 白細布 餝
奉而 内日刺 宮舎人方 [一云 者] 雪穂 麻衣服者 夢鴨 現前鴨跡 雲入夜之 迷間 朝裳
吉 城於道従 角障經 石村乎見乍 神葬 々奉者 徃道之 田付S不知 雖思 印手無見 雖
歎 奥香乎無見 御袖 徃觸之松矣 言不問 木雖在 荒玉之 立月毎 天原 振放見管 珠手
次 懸而思名 雖恐有
[訓読]かけまくも あやに畏し 藤原の 都しみみに 人はしも 満ちてあれども 君はし
も 多くいませど 行き向ふ 年の緒長く 仕へ来し 君の御門を 天のごと 仰ぎて見つ
つ 畏けど 思ひ頼みて いつしかも 日足らしまして 望月の 満しけむと 我が思へる
皇子の命は 春されば 植槻が上の 遠つ人 松の下道ゆ 登らして 国見遊ばし 九月の
しぐれの秋は 大殿の 砌しみみに 露負ひて 靡ける萩を 玉たすき 懸けて偲はし み
雪降る 冬の朝は 刺し柳 根張り梓を 大御手に 取らし賜ひて 遊ばしし 我が大君を
霞立つ 春の日暮らし まそ鏡 見れど飽かねば 万代に かくしもがもと 大船の 頼め
る時に 泣く我れ 目かも迷へる 大殿を 振り放け見れば 白栲に 飾りまつりて うちひ
さす 宮の舎人も [一云 は] 栲のほの 麻衣着れば 夢かも うつつかもと 曇り夜の 迷
へる間に あさもよし 城上の道ゆ つのさはふ 磐余を見つつ 神葬り 葬りまつれば 行
く道の たづきを知らに 思へども 験をなみ 嘆けども 奥処をなみ 大御袖 行き触れ
し松を 言問はぬ 木にはありとも あらたまの 立つ月ごとに 天の原 振り放け見つつ
玉たすき 懸けて偲はな 畏くあれども
[仮名],かけまくも,あやにかしこし,ふぢはらの,みやこしみみに,ひとはしも,みちてあ
れども,きみはしも,おほくいませど,ゆきむかふ,としのをながく,つかへこし,きみのみ
かどを,あめのごと,あふぎてみつつ,かしこけど,おもひたのみて,いつしかも,ひたらし
まして,もちづきの,たたはしけむと,わがもへる,みこのみことは,はるされば,うゑつき
がうへの,とほつひと,まつのしたぢゆ,のぼらして,くにみあそばし,ながつきの,しぐれ
のあきは,おほとのの,みぎりしみみに,つゆおひて,なびけるはぎを,たまたすき,かけて
しのはし,みゆきふる,ふゆのあしたは,さしやなぎ,ねはりあづさを,おほみてに,とらし
たまひて,あそばしし,わがおほきみを,かすみたつ,はるのひくらし,まそかがみ,みれど
あかねば,よろづよに,かくしもがもと,おほぶねの,たのめるときに,なくわれ,めかもま
とへる,おほとのを,ふりさけみれば,しろたへに,かざりまつりて,うちひさす,みやのと
ねりも[は],たへのほの,あさぎぬければ,いめかも,うつつかもと,くもりよの,まとへるほ
どに,あさもよし,きのへのみちゆ,つのさはふ,いはれをみつつ,かむはぶり,はぶりまつ
れば,ゆくみちの,たづきをしらに,おもへども,しるしをなみ,なげけども,おくかをなみ
,おほみそで,ゆきふれしまつを,こととはぬ,きにはありとも,あらたまの,たつつきごと
に,あまのはら,ふりさけみつつ,たまたすき,かけてしのはな,かしこくあれども
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