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雜歌
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雜歌

3221

[題詞]雜歌

[原文]冬<木>成 春去来者 朝尓波 白露置 夕尓波 霞多奈妣久 汗瑞能振 樹奴礼我之 多尓 鴬鳴母
[訓読]冬こもり 春さり来れば 朝には 白露置き 夕には 霞たなびく 汗瑞能振 木末 が下に 鴬鳴くも
[仮名],ふゆこもり,はるさりくれば,あしたには,しらつゆおき,ゆふへには,かすみたな びく,,****,こぬれがしたに,うぐひすなくも
[_]
[左注]右一首
[_]
不 → 木 [元][天][類]
[_]
国見歌,春

3222

[題詞]

[原文]三諸者 人之守山 本邊者 馬酔木花開 末邊方 椿花開 浦妙 山曽 泣兒守山
[訓読]みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし 山 ぞ 泣く子守る山
[仮名],みもろは,ひとのもるやま,もとへは,あしびはなさき,すゑへは,つばきはなさく ,うらぐはし,やまぞ,なくこもるやま
[_]
[左注]右一首
[_]
[_]
・神山,三輪山,明日香,地名

3223

[題詞]

[原文]霹靂之 日香天之 九月乃 <鍾>礼乃落者 鴈音文 未来鳴 甘南備乃 清三田屋乃 垣津田乃 池之堤<之> 百不足 <五十>槻枝丹 水枝指 秋赤葉 真割持 小鈴<文>由良尓 手弱女尓 吾者有友 引攀而 峯文十遠仁 に手折 吾者持而徃 公之頭刺荷
[訓読]かむとけの 日香空の 九月の しぐれの降れば 雁がねも いまだ来鳴かぬ 神な びの 清き御田屋の 垣つ田の 池の堤の 百足らず 斎槻の枝に 瑞枝さす 秋の黄葉 ま き持てる 小鈴もゆらに 手弱女に 我れはあれども 引き攀ぢて 枝もとををに ふさ手 折り 我は持ちて行く 君がかざしに
[仮名],かむとけの,**そらの,ながつきの,しぐれのふれば,かりがねも,いまだきなかぬ ,かむなびの,きよきみたやの,かきつたの,いけのつつみの,ももたらず,いつきのえだに ,みづえさす,あきのもみちば,まきもてる,をすずもゆらに,たわやめに,われはあれども ,ひきよぢて,えだもとををに,ふさたをり,わはもちてゆく,きみがかざしに
[_]
[左注](右二首)
[_]
[天][類][紀] / <> → 之 [西(左書)][元][天][類] / く → 五十 [万葉考] / 父 → 文 [元][天][紀]
[_]
神祭り,寿歌,秋,植物,宴席,三輪山,地名

3224

[題詞]反歌

[原文]獨耳 見者戀染 神名火乃 山黄葉 手折来君
[訓読]ひとりのみ見れば恋しみ神なびの山の黄葉手折り来り君
[仮名],ひとりのみ,みればこほしみ,かむなびの,やまのもみちば,たをりけりきみ
[_]
[左注]右二首
[_]
[_]
宴席,三輪山,地名

3225

[題詞]

[原文]天雲之 影<塞>所見 隠来<矣> 長谷之河者 浦無蚊 船之依不来 礒無蚊 海部之 釣不為 吉咲八師 浦者無友 吉畫矢寺 礒者無友 奥津浪 諍榜入来 白水郎之釣船
[訓読]天雲の 影さへ見ゆる こもりくの 泊瀬の川は 浦なみか 舟の寄り来ぬ 礒なみ か 海人の釣せぬ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 礒はなくとも 沖つ波 競ひ 漕入り来 海人の釣舟
[仮名],あまくもの,かげさへみゆる,こもりくの,はつせのかはは,うらなみか,ふねのよ りこぬ,いそなみか,あまのつりせぬ,よしゑやし,うらはなくとも,よしゑやし,いそはな くとも,おきつなみ,きほひこぎりこ,あまのつりぶね
[_]
[左注](右二首)
[_]
[元][天] / 笑 → 矣 [西(訂正)][元][天][類] / 諍 [古][類][天] 淨
[_]
桜井,奈良,寿歌,土地讃美

3226

[題詞]反歌

[原文]沙邪礼浪 浮而流 長谷河 可依礒之 無蚊不怜也
[訓読]さざれ波浮きて流るる泊瀬川寄るべき礒のなきが寂しさ
[仮名],さざれなみ,うきてながるる,はつせがは,よるべきいその,なきがさぶしさ
[_]
[左注]右二首
[_]
[_]
桜井,土地讃美,寿歌

3227

[題詞]

[原文]葦原笶 水穂之國丹 手向為跡 天降座兼 五百万 千万神之 神代従 云續来在 甘 南備乃 三諸山者 春去者 春霞立 秋徃者 紅丹穂經 <甘>甞備乃 三諸乃神之 帶為 明 日香之河之 水尾速 生多米難 石枕 蘿生左右二 新夜乃 好去通牟 事計 夢尓令見社 劔 刀 齊祭 神二師座者
[訓読]葦原の 瑞穂の国に 手向けすと 天降りましけむ 五百万 千万神の 神代より 言ひ継ぎ来る 神なびの みもろの山は 春されば 春霞立つ 秋行けば 紅にほふ 神な びの みもろの神の 帯ばせる 明日香の川の 水脈早み 生しためかたき 石枕 苔生す までに 新夜の 幸く通はむ 事計り 夢に見せこそ 剣太刀 斎ひ祭れる 神にしませば
[仮名],あしはらの,みづほのくにに,たむけすと,あもりましけむ,いほよろづ,ちよろづ かみの,かむよより,いひつぎきたる,かむなびの,みもろのやまは,はるされば,はるかす みたつ,あきゆけば,くれなゐにほふ,かむなびの,みもろのかみの,おばせる,あすかのか はの,みをはやみ,むしためかたき,いしまくら,こけむすまでに,あらたよの,さきくかよ はむ,ことはかり,いめにみせこそ,つるぎたち,いはひまつれる,かみにしませば
[_]
[左注](右三首 但或書此短歌一首無有載之也)
[_]
[西(訂正)][天][紀][細]
[_]
明日香,奈良,寿歌,神祭り,賀歌,新婚,永遠,婚礼

3228

[題詞]反歌

[原文]神名備能 三諸之山丹 隠蔵杉 思将過哉 蘿生左右
[訓読]神なびの三諸の山に斎ふ杉思ひ過ぎめや苔生すまでに
[仮名],かむなびの,みもろのやまに,いはふすぎ,おもひすぎめや,こけむすまでに
[_]
[左注](右三首 但或書此短歌一首無有載之也)
[_]
[_]
睥奈良,寿歌,賀歌,新婚,永遠,婚礼

3229

[題詞](反歌)

[原文]五十串立 神酒座奉 神主部之 雲聚<玉>蔭 見者乏文
[訓読]斎串立てみわ据ゑ奉る祝部がうずの玉かげ見ればともしも
[仮名],いぐしたて,みわすゑまつる,はふりへが,うずのたまかげ,みればともしも
[_]
[左注]右三首 但或書此短歌一首無有載之也
[_]
[元][天][類]
[_]
・寿歌,新婚

3230

[題詞]

[原文]帛S 楢従出而 水蓼 穂積至 鳥網張 坂手乎過 石走 甘南備山丹 朝宮 仕奉而 吉野部登 入座見者 古所念
[訓読]みてぐらを 奈良より出でて 水蓼 穂積に至り 鳥網張る 坂手を過ぎ 石走る 神なび山に 朝宮に 仕へ奉りて 吉野へと 入ります見れば いにしへ思ほゆ
[仮名],みてぐらを,ならよりいでて,みづたで,ほづみにいたり,となみはる,さかてをす ぎ,いはばしる,かむなびやまに,あさみやに,つかへまつりて,よしのへと,いりますみれ ば,いにしへおもほゆ
[_]
[左注](右二首)
[_]
[_]
・地名,明日香,吉野,奈良,聖武天皇

3231

[題詞]反歌

[原文]月日 攝友 久經流 三諸之山 礪津宮地
[訓読]月は日は変らひぬとも久に経る三諸の山の離宮ところ
[仮名],つきひは,かはらひぬとも,ひさにふる,みもろのやまの,とつみやところ
[_]
[左注]右二首 但或本歌曰 故王都跡津宮地也
[_]
[_]
睥奈良,聖武天皇,宮廷讃美,寿歌

3231S

[題詞](反歌)右二首 但或本歌曰

[原文]故王都跡津宮地
[訓読]古き都の離宮ところ
[仮名]ふるきみやこの,とつみやところ
[_]
[左注]也
[_]
[_]
蔑宮廷讃美,聖武天皇,寿歌

3232

[題詞]

[原文]斧取而 丹生桧山 木折来而 筏尓作 二梶貫 礒榜廻乍 嶋傳 雖見不飽 三吉野乃 瀧動々 落白浪
[訓読]斧取りて 丹生の桧山の 木伐り来て 筏に作り 真楫貫き 礒漕ぎ廻つつ 島伝ひ 見れども飽かず み吉野の 瀧もとどろに 落つる白波
[仮名],をのとりて,にふのひやまの,きこりきて,いかだにつくり,まかぢぬき,いそこぎ みつつ,しまづたひ,みれどもあかず,みよしのの,たきもとどろに,おつるしらなみ
[_]
[左注](右二首)
[_]
[_]
奈良,川讃美,

3233

[題詞]反歌

[原文]三芳野 瀧動々 落白浪 留西 妹見<西>巻 欲白浪
[訓読]み吉野の瀧もとどろに落つる白波留まりにし妹に見せまく欲しき白波
[仮名],みよしのの,たきもとどろに,おつるしらなみ,とまりにし,いもにみせまく,ほし きしらなみ
[_]
[左注]右二首
[_]
; 西 [天][類]
[_]
奈良,旋頭歌,土地讃美,望郷

3234

[題詞]

[原文]八隅知之 和期大皇 高照 日之皇子之 聞食 御食都國 神風之 伊勢乃國者 國見 者之毛 山見者 高貴之 河見者 左夜氣久清之 水門成 海毛廣之 見渡 嶋名高之 己許乎 志毛 間細美香母 <挂>巻毛 文尓恐 山邊乃 五十師乃原 尓内日刺 大宮都可倍 朝日奈 須 目細毛 暮日奈須 浦細毛 春山之 四名比盛而 秋山之 色名付思吉 百礒城之 大宮人 者 天地 与日月共 万代尓母我
[訓読]やすみしし 我ご大君 高照らす 日の御子の きこしをす 御食つ国 神風の 伊 勢の国は 国見ればしも 山見れば 高く貴し 川見れば さやけく清し 水門なす 海も ゆたけし 見わたす 島も名高し ここをしも まぐはしみかも かけまくも あやに畏き 山辺の 五十師の原に うちひさす 大宮仕へ 朝日なす まぐはしも 夕日なす うらぐ はしも 春山の しなひ栄えて 秋山の 色なつかしき ももしきの 大宮人は 天地 日月 とともに 万代にもが
[仮名],やすみしし,わごおほきみ,たかてらす,ひのみこの,きこしをす,みけつくに,かむ かぜの,いせのくには,くにみればしも,やまみれば,たかくたふとし,かはみれば,さやけ くきよし,みなとなす,うみもゆたけし,みわたす,しまもなたかし,ここをしも,まぐはし みかも,かけまくも,あやにかしこき,やまのへの,いしのはらに,うちひさす,おほみやつ かへ,あさひなす,まぐはしも,ゆふひなす,うらぐはしも,はるやまの,しなひさかえて,あ きやまの,いろなつかしき,ももしきの,おほみやひとは,あめつち,ひつきとともに,よろ づよにもが
[_]
[左注](右二首)
[_]
[西(訂正貼紙)][元][天][類]
[_]
三重県,枕詞,行幸従駕,宮廷讃美,土地讃美

3235

[題詞]反歌

[原文]山邊乃 五十師乃御井者 自然 成錦乎 張流山可母
[訓読]山辺の五十師の御井はおのづから成れる錦を張れる山かも
[仮名],やまのへの,いしのみゐは,おのづから,なれるにしきを,はれるやまかも
[_]
[左注]右二首
[_]
[_]
三重県,井戸,土地讃美,行幸従駕

3236

[題詞]

[原文]空見津 倭國 青丹吉 常山越而 山代之 管木之原 血速舊 于遅乃渡 瀧屋之 阿 後尼之原尾 千歳尓 闕事無 万歳尓 有通将得 山科之 石田之社之 須馬神尓 奴左取向 而 吾者越徃 相坂山遠
[訓読]そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山越えて 山背の 管木の原 ちはやぶる 宇治の渡り 瀧つ屋の 阿後尼の原を 千年に 欠くることなく 万代に あり通はむと 山科の 石田の杜の すめ神に 幣取り向けて 我れは越え行く 逢坂山を
[仮名],そらみつ,やまとのくに,あをによし,ならやまこえて,やましろの,つつきのはら ,ちはやぶる,うぢのわたり,たぎつやの,あごねのはらを,ちとせに,かくることなく,よろ づよに,ありがよはむと,やましなの,いはたのもりの,すめかみに,ぬさとりむけて,われ はこえゆく,あふさかやまを
[_]
[左注](右三首)
[_]
[_]
・地名,奈良,京都,羈旅,土地讃美,安全祈願

3237

[題詞]或本歌曰

[原文]緑丹吉 平山過而 物部之 氏川渡 未通女等尓 相坂山丹 手向草 絲取置而 我妹 子尓 相海之海之 奥浪 来因濱邊乎 久礼々々登 獨<曽>我来 妹之目乎欲
[訓読]あをによし 奈良山過ぎて もののふの 宇治川渡り 娘子らに 逢坂山に 手向け 草 幣取り置きて 我妹子に 近江の海の 沖つ波 来寄る浜辺を くれくれと ひとりぞ 我が来る 妹が目を欲り
[仮名],あをによし,ならやますぎて,もののふの,うぢかはわたり,をとめらに,あふさか やまに,たむけくさ,ぬさとりおきて,わぎもこに,あふみのうみの,おきつなみ,きよるは まへを,くれくれと,ひとりぞわがくる,いもがめをほり
[_]
[左注](右三首)
[_]
塙) 青 / 雷 → 曽 [元][天][紀]
[_]
地名,奈良,京都,羈旅,滋賀,琵琶湖,望郷

3238

[題詞]反歌

[原文]相坂乎 打出而見者 淡海之海 白木綿花尓 浪立渡
[訓読]逢坂をうち出でて見れば近江の海白木綿花に波立ちわたる
[仮名],あふさかを,うちいでてみれば,あふみのうみ,しらゆふばなに,なみたちわたる
[_]
[左注]右三首
[_]
[_]
琵琶湖,地名,羈旅,土地讃美,叙景

3239

[題詞]

[原文]近江之海 泊八十有 八十嶋之 嶋之埼邪伎 安利立有 花橘乎 末枝尓 毛知引懸 仲枝尓 伊加流我懸 下枝尓 <比>米乎懸 己之母乎 取久乎不知 己之父乎 取久乎思良 尓 伊蘇婆比座与 伊可流我等<比>米登
[訓読]近江の海 泊り八十あり 八十島の 島の崎々 あり立てる 花橘を ほつ枝に も ち引き懸け 中つ枝に 斑鳩懸け 下枝に 比米を懸け 汝が母を 取らくを知らに 汝が 父を 取らくを知らに いそばひ居るよ 斑鳩と比米と
[仮名],あふみのうみ,とまりやそあり,やそしまの,しまのさきざき,ありたてる,はなた ちばなを,ほつえに,もちひきかけ,なかつえに,いかるがかけ,しづえに,ひめをかけ,なが ははを,とらくをしらに,ながちちを,とらくをしらに,いそばひをるよ,いかるがとひめ と
[_]
[左注]右一首
[_]
[元][天][細] / 此 → 比 [元][天][細]
[_]
琵琶湖,動物,童謡,風喩,風俗,民謡

3240

[題詞]

[原文]王 命恐 雖見不飽 楢山越而 真木積 泉河乃 速瀬 <竿>刺渡 千速振 氏渡乃 多 企都瀬乎 見乍渡而 近江道乃 相坂山丹 手向為 吾越徃者 樂浪乃 志我能韓埼 幸有者 又反見 道前 八十阿毎 嗟乍 吾過徃者 弥遠丹 里離来奴 弥高二 山<文>越来奴 劔刀 鞘従拔出而 伊香胡山 如何吾将為 徃邊不知而
[訓読]大君の 命畏み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木積む 泉の川の 早き瀬を 棹 さし渡り ちはやぶる 宇治の渡りの たきつ瀬を 見つつ渡りて 近江道の 逢坂山に 手向けして 我が越え行けば 楽浪の 志賀の唐崎 幸くあらば またかへり見む 道の隈 八十隈ごとに 嘆きつつ 我が過ぎ行けば いや遠に 里離り来ぬ いや高に 山も越え来 ぬ 剣太刀 鞘ゆ抜き出でて 伊香胡山 いかにか我がせむ ゆくへ知らずて
[仮名],おほきみの,みことかしこみ,みれどあかぬ,ならやまこえて,まきつむ,いづみの かはの,はやきせを,さをさしわたり,ちはやぶる,うぢのわたりの,たきつせを,みつつわ たりて,あふみぢの,あふさかやまに,たむけして,わがこえゆけば,ささなみの,しがのか らさき,さきくあらば,またかへりみむ,みちのくま,やそくまごとに,なげきつつ,わがす ぎゆけば,いやとほに,さとさかりきぬ,いやたかに,やまもこえきぬ,つるぎたち,さやゆ ぬきいでて,いかごやま,いかにかわがせむ,ゆくへしらずて
[_]
[左注](右二首)
[_]
[元][天][紀] / 父 → 文 [西(訂正)][元][天][細]
[_]
道行き,奈良,京都,滋賀,序詞,羈旅,旅愁

3241

[題詞]反歌

[原文]天地乎 <歎>乞祷 幸有者 又<反>見 思我能韓埼
[訓読]天地を嘆き祈ひ祷み幸くあらばまたかへり見む志賀の唐崎
[仮名],あめつちを,なげきこひのみ,さきくあらば,またかへりみむ,しがのからさき
[_]
[左注]右二首 但此短歌者 或書云穂積朝臣老配於佐渡之時作歌者也
[_]
[万葉考] / <> → 反 [西(右書)][元][天][類] / 者 [西(朱書消去)]
[_]
羈旅,手向け,穂積老,

3242

[題詞]

[原文]百岐年 三野之國之 高北之 八十一隣之宮尓 日向尓 行靡闕矣 有登聞而 吾通 <道>之 奥十山 <三>野之山 <靡>得 人雖跡 如此依等 人雖衝 無意山之 奥礒山 三野 之山
[訓読]ももきね 美濃の国の 高北の くくりの宮に 日向ひに 行靡闕矣 ありと聞きて 我が行く道の 奥十山 美濃の山 靡けと 人は踏めども かく寄れと 人は突けども 心 なき山の 奥十山 美濃の山
[仮名],ももきね,みののくにの,たかきたの,くくりのみやに,ひむかひに,*******,ありと ききて,わがゆくみちの,おきそやま,みののやま,なびけと,ひとはふめども,かくよれと ,ひとはつけども,こころなきやまの,おきそやま,みののやま
[_]
[左注]右一首
[_]
機・[元][天][紀] / <> → 三 [西(右書)][元][天][紀] / 靡 [西(上書 訂正)][元][天][紀]
[_]
岐阜,羈旅,旅愁,難訓,景行天皇

3243

[題詞]

[原文]處女等之 <麻>笥垂有 續麻成 長門之浦丹 朝奈祇尓 満来塩之 夕奈祇尓 依来 波乃 <彼>塩乃 伊夜益舛二 彼浪乃 伊夜敷布二 吾妹子尓 戀乍来者 阿胡乃海之 荒礒 之於丹 濱菜採 海部處女等 纓有 領巾文光蟹 手二巻流 玉毛湯良羅尓 白栲乃 袖振所 見津 相思羅霜
[訓読]娘子らが 麻笥に垂れたる 続麻なす 長門の浦に 朝なぎに 満ち来る潮の 夕な ぎに 寄せ来る波の その潮の いやますますに その波の いやしくしくに 我妹子に 恋ひつつ来れば 阿胡の海の 荒礒の上に 浜菜摘む 海人娘子らが うながせる 領布も 照るがに 手に巻ける 玉もゆららに 白栲の 袖振る見えつ 相思ふらしも
[仮名],をとめらが,をけにたれたる,うみをなす,ながとのうらに,あさなぎに,みちくる しほの,ゆふなぎに,よせくるなみの,そのしほの,いやますますに,そのなみの,いやしく しくに,わぎもこに,こひつつくれば,あごのうみの,ありそのうへに,はまなつむ,あまを とめらが,うなげる,ひれもてるがに,てにまける,たまもゆららに,しろたへの,そでふる みえつ,あひおもふらしも
[_]
[左注](右二首)
[_]
[元][天][類] / 波 → 彼 [類] / 舛 [元][天][類](塙) 升
[_]
広島,山口,倉橋島,桂浜,望郷,土地讃美,恋情,羈旅

3244

[題詞]反歌

[原文]阿胡乃海之 荒礒之上之 少浪 吾戀者 息時毛無
[訓読]阿胡の海の荒礒の上のさざれ波我が恋ふらくはやむ時もなし
[仮名],あごのうみの,ありそのうへの,さざれなみ,あがこふらくは,やむときもなし
[_]
[左注]右二首
[_]
[_]
呉市,広島,望郷,羈旅,恋情

3245

[題詞]

[原文]天橋<文> 長雲鴨 高山<文> 高雲鴨 月夜見乃 持有越水 伊取来而 公奉而 越得 之<旱>物
[訓読]天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも
[仮名],あまはしも,ながくもがも,たかやまも,たかくもがも,つくよみの,もてるをちみ づ,いとりきて,きみにまつりて,をちえてしかも
[_]
[左注](右二首)
[_]
[西(訂正)][元][天][紀] / 父 → 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 早 → 旱 [元]
[_]

3246

[題詞]反歌

[原文]天有哉 月日如 吾思有 君之日異 老落惜文
[訓読]天なるや月日のごとく我が思へる君が日に異に老ゆらく惜しも
[仮名],あめなるや,つきひのごとく,あがおもへる,きみがひにけに,おゆらくをしも
[_]
[左注]右二首
[_]
濕(塙)(楓) 公
[_]

3247

[題詞]

[原文]沼名河之 底奈流玉 求而 得之玉可毛 拾而 得之玉可毛 安多良思吉 君之 老落 惜毛
[訓読]沼名川の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾ひて 得し玉かも あたらしき 君が 老ゆらく惜しも
[仮名],ぬながはの,そこなるたま,もとめて,えしたまかも,ひりひて,えしたまかも,あた らしき,きみが,おゆらくをしも
[_]
[左注]右一首
[_]
[_]
姫川,序詞,寿歌,老