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万葉集 (Manyoshu) | ||
寄物陳思
2851
[題詞]寄物陳思
[原文]人所見 表結 人不見 裏紐開 戀日太
[訓読]人の見る上は結びて人の見ぬ下紐開けて恋ふる日ぞ多き
[仮名],ひとのみる,うへはむすびて,ひとのみぬ,したひもあけて,こふるひぞおほき
2852
[題詞](寄物陳思)
[原文]人言 繁時 吾妹 衣有 裏服矣
[訓読]人言の繁き時には我妹子し衣にありせば下に着ましを
[仮名],ひとごとの,しげきときには,わぎもこし,ころもにありせば,したにきましを
2853
[題詞](寄物陳思)
[原文]真珠<服> 遠兼 念 一重衣 一人服寐
[訓読]真玉つくをちをし兼ねて思へこそ一重の衣ひとり着て寝れ
[仮名],またまつく,をちをしかねて,おもへこそ,ひとへのころも,ひとりきてぬれ
2854
[題詞](寄物陳思)
[原文]白細布 我紐緒 不絶間 戀結為 及相日
[訓読]白栲の我が紐の緒の絶えぬ間に恋結びせむ逢はむ日までに
[仮名],しろたへの,わがひものをの,たえぬまに,こひむすびせむ,あはむひまでに
2855
[題詞](寄物陳思)
[原文]新<治> 今作路 清 聞鴨 妹於事矣
[訓読]新治の今作る道さやかにも聞きてけるかも妹が上のことを
[仮名],にひはりの,いまつくるみち,さやかにも,ききてけるかも,いもがうへのことを
2856
[題詞](寄物陳思)
[原文]山代 石田<社> 心鈍 手向為在 妹相難
[訓読]山背の石田の社に心おそく手向けしたれや妹に逢ひかたき
[仮名],やましろの,いはたのもりに,こころおそく,たむけしたれや,いもにあひかたき
2857
[題詞](寄物陳思)
[原文]菅根之 惻隠々々 照日 乾哉吾袖 於妹不相為
[訓読]菅の根のねもころごろに照る日にも干めや我が袖妹に逢はずして
[仮名],すがのねの,ねもころごろに,てるひにも,ひめやわがそで,いもにあはずして
2858
[題詞](寄物陳思)
[原文]妹戀 不寐朝 吹風 妹經者 吾与經
[訓読]妹に恋ひ寐ねぬ朝明に吹く風は妹にし触れば我れさへに触れ
[仮名],いもにこひ,いねぬあさけに,ふくかぜは,いもにしふれば,われさへにふれ
2859
[題詞](寄物陳思)
[原文]飛鳥川 高川避紫 越来 信今夜 不明行哉
[訓読]明日香川高川避かし越ゑ来しをまこと今夜は明けずも行かぬか
[仮名],あすかがは,たかがはよさし,こゑこしを,まことこよひは,あけずもゆかぬか
2860
[題詞](寄物陳思)
[原文]八<釣>川 水底不絶 行水 續戀 是比歳 [或本歌曰 水尾母不絶]
[訓読]八釣川水底絶えず行く水の継ぎてぞ恋ふるこの年ころを [或本歌曰 水脈も絶
えせず]
[仮名],やつりがは,みなそこたえず,ゆくみづの,つぎてぞこふる,このとしころを,[みを
もたえせず]
2861
[題詞](寄物陳思)
[原文]礒上 生小松 名惜 人不知 戀渡鴨
[訓読]礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも
[仮名],いそのうへに,おふるこまつの,なををしみ,ひとにしらえず,こひわたるかも
2861S
[題詞](寄物陳思)或本歌曰
[原文]巌上尓 立小松 名惜 人尓者不云 戀渡鴨
[訓読]岩の上に立てる小松の名を惜しみ人には言はず恋ひわたるかも
[仮名],いはのうへに,たてるこまつの,なををしみ,ひとにはいはず,こひわたるかも
2862
[題詞](寄物陳思)
[原文]山川 水陰生 山草 不止妹 所念鴨
[訓読]山川の水陰に生ふる山菅のやまずも妹は思ほゆるかも
[仮名],やまがはの,みづかげにおふる,やますげの,やまずもいもは,おもほゆるかも
2863
[題詞](寄物陳思)
[原文]淺葉野 立神古 菅根 惻隠誰故 吾不戀 [或本歌曰 誰葉野尓 立志奈比垂]
[訓読]浅葉野に立ち神さぶる菅の根のねもころ誰がゆゑ我が恋ひなくに [或本歌曰
誰が葉野に立ちしなひたる]
[仮名],あさはのに,たちかむさぶる,すがのねの,ねもころたがゆゑ,あがこひなくに,[た
がはのに,たちしなひたる]
万葉集 (Manyoshu) | ||