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問答

2808

[題詞]問答

[原文]眉根掻 鼻火紐解 待八方 何時毛将見跡 戀来吾乎
[訓読]眉根掻き鼻ひ紐解け待てりやもいつかも見むと恋ひ来し我れを
[仮名],まよねかき,はなひひもとけ,まてりやも,いつかもみむと,こひこしわれを
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[左注]右上見柿本朝臣人麻呂之歌中 但以問答故累載於茲也 ( / 右二首)
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[校異]
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[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋情

2809

[題詞](問答)

[原文]今日有者 鼻<火鼻火之> 眉可由見 思之言者 君西在来
[訓読]今日なれば鼻ひ鼻ひし眉かゆみ思ひしことは君にしありけり
[仮名],けふなれば,はなひはなひし,まよかゆみ,おもひしことは,きみにしありけり
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[左注]右二首
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[校異]之々々火 → 火鼻火之 [万葉集略解]
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[KW],恋情,女歌

2810

[題詞](問答)

[原文]音耳乎 聞而哉戀 犬馬鏡 <直目>相而 戀巻裳太口
[訓読]音のみを聞きてや恋ひむまそ鏡直目に逢ひて恋ひまくもいたく
[仮名],おとのみを,ききてやこひむ,まそかがみ,ただめにあひて,こひまくもいたく
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[左注](右二首)
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[校異]目直 → 直目 [新校]
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[KW],枕詞,恋情

2811

[題詞](問答)

[原文]此言乎 聞跡<平> 真十鏡 照月夜裳 闇耳見
[訓読]この言を聞かむとならしまそ鏡照れる月夜も闇のみに見つ
[仮名],このことを,きかむとならし,まそかがみ,てれるつくよも,やみのみにみつ
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[左注]右二首
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[校異]乎 → 平 [万葉集新考]
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[KW],枕詞,恋情

2812

[題詞](問答)

[原文]吾妹兒尓 戀而為便無<三> 白細布之 袖反之者 夢所見也
[訓読]我妹子に恋ひてすべなみ白栲の袖返ししは夢に見えきや
[仮名],わぎもこに,こひてすべなみ,しろたへの,そでかへししは,いめにみえきや
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[左注](右二首)
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[校異]<> → 三 [嘉][細]
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[KW],枕詞,恋情

2813

[題詞](問答)

[原文]吾背子之 袖反夜之 夢有之 真毛君尓 如相有
[訓読]我が背子が袖返す夜の夢ならしまことも君に逢ひたるごとし
[仮名],わがせこが,そでかへすよの,いめならし,まこともきみに,あひたるごとし
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],女歌,恋情

2814

[題詞](問答)

[原文]吾戀者 名草目金津 真氣長 夢不所見而 <年>之經去礼者
[訓読]我が恋は慰めかねつま日長く夢に見えずて年の経ぬれば
[仮名],あがこひは,なぐさめかねつ,まけながく,いめにみえずて,としのへぬれば
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[左注](右二首)
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[校異]羊 → 年 [嘉][文][紀][細]
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[KW],恋情

2815

[題詞](問答)

[原文]真氣永 夢毛不所見 雖絶 吾之片戀者 止時毛不有
[訓読]ま日長く夢にも見えず絶えぬとも我が片恋はやむ時もあらじ
[仮名],まけながく,いめにもみえず,たえぬとも,あがかたこひは,やむときもあらじ
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],恋情

2816

[題詞](問答)

[原文]浦觸而 物莫念 天雲之 絶多不心 吾念莫國
[訓読]うらぶれて物な思ひそ天雲のたゆたふ心我が思はなくに
[仮名],うらぶれて,ものなおもひそ,あまくもの,たゆたふこころ,わがおもはなくに
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[左注](右二首)
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[校異]
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[KW],枕詞,恋愛

2817

[題詞](問答)

[原文]浦觸而 物者不念 水無瀬川 有而毛水者 逝云物乎
[訓読]うらぶれて物は思はじ水無瀬川ありても水は行くといふものを
[仮名],うらぶれて,ものはおもはじ,みなせがは,ありてもみづは,ゆくといふものを
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],恋愛

2818

[題詞](問答)

[原文]垣津旗 開沼之菅乎 笠尓縫 将著日乎待尓 <年>曽經去来
[訓読]かきつはた佐紀沼の菅を笠に縫ひ着む日を待つに年ぞ経にける
[仮名],かきつはた,さきぬのすげを,かさにぬひ,きむひをまつに,としぞへにける
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[左注](右二首)
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[校異]羊 → 年 [嘉][文][類][紀]
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[KW],植物,比喩,恋情,地名,奈良県,佐紀町

2819

[題詞](問答)

[原文]臨照 難波菅笠 置古之 後者誰将著 笠有莫國
[訓読]おしてる難波菅笠置き古し後は誰が着む笠ならなくに
[仮名],おしてる,なにはすがかさ,おきふるし,のちはたがきむ,かさならなくに
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],植物,枕詞,大阪府,難波,怨恨

2820

[題詞](問答)

[原文]如是谷裳 妹乎待南 左夜深而 出来月之 傾二手荷
[訓読]かくだにも妹を待ちなむさ夜更けて出で来し月のかたぶくまでに
[仮名],かくだにも,いもをまちなむ,さよふけて,いでこしつきの,かたぶくまでに
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[左注](右二首)
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[校異]
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[KW],恋情

2821

[題詞](問答)

[原文]木間従 移歴月之 影惜 俳徊尓 左夜深去家里
[訓読]木の間より移ろふ月の影を惜しみ立ち廻るにさ夜更けにけり
[仮名],このまより,うつろふつきの,かげををしみ,たちもとほるに,さよふけにけり
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],恋愛

2822

[題詞](問答)

[原文]栲領布乃 白濱浪乃 不肯縁 荒振妹尓 戀乍曽居 [一云 戀流己呂可母]
[訓読]栲領布の白浜波の寄りもあへず荒ぶる妹に恋ひつつぞ居る [一云 恋ふるころ かも]
[仮名],たくひれの,しらはまなみの,よりもあへず,あらぶるいもに,こひつつぞをる,[こ ふるころかも]
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[左注](右二首)
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[校異]
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[KW],枕詞,恋情,異伝,序詞

2823

[題詞](問答)

[原文]加敝良末尓 君社吾尓 栲領巾之 白濱浪乃 縁時毛無
[訓読]かへらまに君こそ我れに栲領巾の白浜波の寄る時もなき
[仮名],かへらまに,きみこそわれに,たくひれの,しらはまなみの,よるときもなき
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],枕詞,怨恨

2824

[題詞](問答)

[原文]念人 <将>来跡知者 八重六倉 覆庭尓 珠布益乎
[訓読]思ふ人来むと知りせば八重葎覆へる庭に玉敷かましを
[仮名],おもふひと,こむとしりせば,やへむぐら,おほへるにはに,たましかましを
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[左注](右二首)
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[校異]徃 → 将 [西(訂正右書)][嘉][文][類][紀]
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[KW],植物,女歌

2825

[題詞](問答)

[原文]玉敷有 家毛何将為 八重六倉 覆小屋毛 妹与居者
[訓読]玉敷ける家も何せむ八重葎覆へる小屋も妹と居りせば
[仮名],たましける,いへもなにせむ,やへむぐら,おほへるこやも,いもとをりせば
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],植物,恋愛

2826

[題詞](問答)

[原文]如是為乍 有名草目手 玉緒之 絶而別者 為便可無
[訓読]かくしつつあり慰めて玉の緒の絶えて別ればすべなかるべし
[仮名],かくしつつ,ありなぐさめて,たまのをの,たえてわかれば,すべなかるべし
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[左注](右二首)
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[校異]
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[KW],枕詞,恋愛

2827

[題詞](問答)

[原文]紅 花西有者 衣袖尓 染著持而 可行所念
[訓読]紅の花にしあらば衣手に染め付け持ちて行くべく思ほゆ
[仮名],くれなゐの,はなにしあらば,ころもでに,そめつけもちて,ゆくべくおもほゆ
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[左注]右二首
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[校異]
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[KW],恋情,別れ