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万葉集 (Manyoshu) | ||
旋頭歌
2351
[題詞]旋頭歌
[原文]新室 壁草苅邇 御座給根 草如 依逢未通女者 公随
[訓読]新室の壁草刈りにいましたまはね草のごと寄り合ふ娘子は君がまにまに
[仮名],にひむろの,かべくさかりに,いましたまはね,くさのごと,よりあふをとめは,き
みがまにまに
2352
[題詞](旋頭歌)
[原文]新室 踏静子之 手玉鳴裳 玉如 所照公乎 内等白世
[訓読]新室を踏み鎮む子が手玉鳴らすも玉のごと照らせる君を内にと申せ
[仮名],にひむろを,ふみしづむこが,ただまならすも,たまのごと,てらせるきみを,うち
にとまをせ
2353
[題詞](旋頭歌)
[原文]長谷 弓槻下 吾隠在妻 赤根刺 所光月夜邇 人見點鴨 [一云 人見豆良牟可]
[訓読]泊瀬の斎槻が下に我が隠せる妻あかねさし照れる月夜に人見てむかも [一云
人見つらむか]
[仮名],はつせの,ゆつきがしたに,わがかくせるつま,あかねさし,てれるつくよに,ひと
みてむかも,[ひとみつらむか]
2354
[題詞](旋頭歌)
[原文]健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖<光> 所顕目八方 [一云 大夫乃 思多鶏備
弖]
[訓読]ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻天地に通り照るともあらはれめやも [一云
ますらをの思ひたけびて]
[仮名],ますらをの,おもひみだれて,かくせるそのつま,あめつちに,とほりてるとも,あ
らはれめやも,[ますらをの,おもひたけびて]
2355
[題詞](旋頭歌)
[原文]恵得 吾念妹者 早裳死耶 雖生 吾邇應依 人云名國
[訓読]愛しと我が思ふ妹は早も死なぬか生けりとも我れに寄るべしと人の言はなくに
[仮名],うつくしと,あがおもふいもは,はやもしなぬか,いけりとも,われによるべしと
,ひとのいはなくに
2356
[題詞](旋頭歌)
[原文]狛錦 紐片<叙> 床落邇祁留 明夜志 将来得云者 取置<待>
[訓読]高麗錦紐の片方ぞ床に落ちにける明日の夜し来なむと言はば取り置きて待たむ
[仮名],こまにしき,ひものかたへぞ,とこにおちにける,あすのよし,きなむといはば,と
りおきてまたむ
2357
[題詞](旋頭歌)
[原文]朝戸出 公足結乎 閏露原 早起 出乍吾毛 裳下閏奈
[訓読]朝戸出の君が足結を濡らす露原早く起き出でつつ我れも裳裾濡らさな
[仮名],あさとでの,きみがあゆひを,ぬらすつゆはら,はやくおき,いでつつわれも,もす
そぬらさな
2358
[題詞](旋頭歌)
[原文]何為 命本名 永欲為 雖生 吾念妹 安不相
[訓読]何せむに命をもとな長く欲りせむ生けりとも我が思ふ妹にやすく逢はなくに
[仮名],なにせむに,いのちをもとな,ながくほりせむ,いけりとも,あがおもふいもに,や
すくあはなくに
2359
[題詞](旋頭歌)
[原文]息緒 吾雖念 人目多社 吹風 有數々 應相物
[訓読]息の緒に我れは思へど人目多みこそ吹く風にあらばしばしば逢ふべきものを
[仮名],いきのをに,われはおもへど,ひとめおほみこそ,ふくかぜに,あらばしばしば,あ
ふべきものを
2360
[題詞](旋頭歌)
[原文]人祖 未通女兒居 守山邊柄 朝々 通公 不来哀
[訓読]人の親処女児据ゑて守山辺から朝な朝な通ひし君が来ねば悲しも
[仮名],ひとのおや,をとめこすゑて,もるやまへから,あさなさな,かよひしきみが,こね
ばかなしも
2361
[題詞](旋頭歌)
[原文]天在 一棚橋 何将行 穉草 妻所云 足<壮>嚴
[訓読]天なる一つ棚橋いかにか行かむ若草の妻がりと言はば足飾りせむ
[仮名],あめなる,ひとつたなはし,いかにかゆかむ,わかくさの,つまがりといはば,あし
かざりせむ
2362
[題詞](旋頭歌)
[原文]開木代 来背若子 欲云余 相狭丸 吾欲云 開木代来背
[訓読]山背の久背の若子が欲しと言ふ我れあふさわに我れを欲しと言ふ山背の久世
[仮名],やましろの,くせのわくごが,ほしといふわれ,あふさわに,われをほしといふ,や
ましろのくぜ
2363
[題詞](旋頭歌)
[原文]岡前 多未足道乎 人莫通 在乍毛 公之来 曲道為
[訓読]岡の崎廻みたる道を人な通ひそありつつも君が来まさむ避き道にせむ
[仮名],をかのさき,たみたるみちを,ひとなかよひそ,ありつつも,きみがきまさむ,よき
みちにせむ
2364
[題詞](旋頭歌)
[原文]玉垂 小簾之寸鶏吉仁 入通来根 足乳根之 母我問者 風跡将申
[訓読]玉垂の小簾のすけきに入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ
[仮名],たまだれの,をすのすけきに,いりかよひこね,たらちねの,ははがとはさば,かぜ
とまをさむ
2365
[題詞](旋頭歌)
[原文]内日左須 宮道尓相之 人妻<め> 玉緒之 念乱而 宿夜四曽多寸
[訓読]うちひさす宮道に逢ひし人妻ゆゑに玉の緒の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き
[仮名],うちひさす,みやぢにあひし,ひとづまゆゑに,たまのをの,おもひみだれて,ぬる
よしぞおほき
2366
[題詞](旋頭歌)
[原文]真十鏡 見之賀登念 妹相可聞 玉緒之 絶有戀之 繁比者
[訓読]まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ
[仮名],まそかがみ,みしかとおもふ,いももあはぬかも,たまのをの,たえたるこひの,し
げきこのころ
2367
[題詞](旋頭歌)
[原文]海原乃 路尓乗哉 吾戀居 大舟之 由多尓将有 人兒由恵尓
[訓読]海原の道に乗りてや我が恋ひ居らむ大船のゆたにあるらむ人の子ゆゑに
[仮名],うなはらの,みちにのりてや,あがこひをらむ,おほぶねの,ゆたにあるらむ,ひと
のこゆゑに
万葉集 (Manyoshu) | ||