University of Virginia Library

義經千本櫻
幕柱五千本

大物の船櫓は

うら波競ふ

猛將の忠臣

芳野の花櫓は

やま風競ふ

化性の孝心

押へて締めて馴れさする、身の代の早鮨は、主從の縁に引かるゝ、内や床しき惡 者の底意は、あふむ返しの下の句は勇者の返禮、威勢輝やく高提灯、照らして歸る錦 の陣羽織

締めつ緩めつ猶豫の調べ、血筋は親子の縁に引かるゝ鼓の愛着、音や床しき化性 の正體、恩返しの賜物と、賢者の添へたる名を、照らしたる狐火は、古栖へかへる狐 の白羽織