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[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])或本歌曰
[原文]宇都曽臣等 念之時 携手 吾二見之 出立 百兄槻木 虚知期知尓 枝刺有如 春葉
茂如 念有之 妹庭雖在 恃有之 妹庭雖在 世中 背不得者 香切火之 燎流荒野尓 白栲
天領巾隠 鳥自物 朝立伊行而 入日成 隠西加婆 吾妹子之 形見尓置有 緑兒之 乞哭
別 取委 物之無者 男自物 腋挾持 吾妹子與 二吾宿之 枕附 嬬屋内尓 <日>者 浦不怜
晩之 夜者 息<衝>明之 雖嘆 為便不知 雖戀 相縁無 大鳥 羽易山尓 汝戀 妹座等 人
云者 石根割見而 奈積来之 好雲叙無 宇都曽臣 念之妹我 灰而座者
[訓読]うつそみと 思ひし時に たづさはり 我がふたり見し 出立の 百枝槻の木 こち
ごちに 枝させるごと 春の葉の 茂きがごとく 思へりし 妹にはあれど 頼めりし 妹
にはあれど 世間を 背きしえねば かぎるひの 燃ゆる荒野に 白栲の 天領巾隠り 鳥
じもの 朝立ちい行きて 入日なす 隠りにしかば 我妹子が 形見に置ける みどり子の
乞ひ泣くごとに 取り与ふ 物しなければ 男じもの 脇ばさみ持ち 我妹子と 二人我
が寝し 枕付く 妻屋のうちに 昼は うらさび暮らし 夜は 息づき明かし 嘆けども 為
むすべ知らに 恋ふれども 逢ふよしをなみ 大鳥の 羽がひの山に 汝が恋ふる 妹はい
ますと 人の言へば 岩根さくみて なづみ来し よけくもぞなき うつそみと 思ひし妹
が 灰にてませば
[仮名],うつそみと,おもひしときに,たづさはり,わがふたりみし,いでたちの,ももえつ
きのき,こちごちに,えださせるごと,はるのはの,しげきがごとく,おもへりし,いもには
あれど,たのめりし,いもにはあれど,よのなかを,そむきしえねば,かぎるひの,もゆるあ
らのに,しろたへの,あまひれがくり,とりじもの,あさだちいゆきて,いりひなす,かくり
にしかば,わぎもこが,かたみにおける,みどりこの,こひなくごとに,とりあたふ,ものし
なければ,をとこじもの,わきばさみもち,わぎもこと,ふたりわがねし,まくらづく,つま
やのうちに,ひるは,うらさびくらし,よるは,いきづきあかし,なげけども,せむすべしら
に,こふれども,あふよしをなみ,おほとりの,はがひのやまに,ながこふる,いもはいます
と,ひとのいへば,いはねさくみて,なづみこし,よけくもぞなき,うつそみと,おもひしい
もが,はひにてませば
[_]
[校異]兄 [金][類] 足 / 妹 [金][類][紀] 姉 / 且 → 日 [金][類] / 衡 → 衝 [金][類][紀] / 戀
[金
][類](塙) 眷
[_]
[KW],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌,枕詞