University of Virginia Library

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[題詞]天平感寶元年閏五月六日以来起小旱百姓田畝稍有<凋>色<也> 至于六月朔日忽 見雨雲之氣仍作雲歌一首 [短歌一絶]

[原文]須賣呂伎能 之伎麻須久尓能 安米能之多 四方能美知尓波 宇麻乃都米 伊都久 須伎波美 布奈乃倍能 伊波都流麻泥尓 伊尓之敝欲 伊麻乃乎都頭尓 万調 麻都流都可 佐等 都久里多流 曽能奈里波比乎 安米布良受 日能可左奈礼婆 宇恵之田毛 麻吉之波 多氣毛 安佐其登尓 之保美可礼由苦 曽乎見礼婆 許己呂乎伊多美 弥騰里兒能 知許布 我其登久 安麻都美豆 安布藝弖曽麻都 安之比奇能 夜麻能多乎理尓 許能見油流 安麻 能之良久母 和多都美能 於枳都美夜敝尓 多知和多里 等能具毛利安比弖 安米母多麻 波祢
[訓読]天皇の 敷きます国の 天の下 四方の道には 馬の爪 い尽くす極み 舟舳の い 果つるまでに いにしへよ 今のをつづに 万調 奉るつかさと 作りたる その生業を 雨 降らず 日の重なれば 植ゑし田も 蒔きし畑も 朝ごとに しぼみ枯れゆく そを見れば 心を痛み みどり子の 乳乞ふがごとく 天つ水 仰ぎてぞ待つ あしひきの 山のたをり に この見ゆる 天の白雲 海神の 沖つ宮辺に 立ちわたり との曇りあひて 雨も賜は ね
[仮名],すめろきの,しきますくにの,あめのした,よものみちには,うまのつめ,いつくす きはみ,ふなのへの,いはつるまでに,いにしへよ,いまのをつづに,よろづつき,まつるつ かさと,つくりたる,そのなりはひを,あめふらず,ひのかさなれば,うゑしたも,まきしは たけも,あさごとに,しぼみかれゆく,そをみれば,こころをいたみ,みどりこの,ちこふが ごとく,あまつみづ,あふぎてぞまつ,あしひきの,やまのたをりに,このみゆる,あまのし らくも,わたつみの,おきつみやへに,たちわたり,とのぐもりあひて,あめもたまはね
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[左注](右二首六月一日晩頭守大伴宿祢家持作之)
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[校異]彫 → 凋 [西(朱筆訂正)][矢][京] / <> → 也 [元][細]
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[KW],天平感宝1年6月1日,作者:大伴家持,年紀,雨乞い,寿歌,高岡,富山