University of Virginia Library

3625

[題詞]古挽歌一首[并短歌]

[原文]由布左礼婆 安之敝尓佐和伎 安氣久礼婆 於伎尓奈都佐布 可母須良母 都麻等 多具比弖 和我尾尓波 之毛奈布里曽等 之<路>多倍乃 波祢左之可倍弖 宇知波良比 左 宿等布毛能乎 由久美都能 可敝良奴其等久 布久可是能 美延奴我其登久 安刀毛奈吉 与能比登尓之弖 和可礼尓之 伊毛我伎世弖思 奈礼其呂母 蘇弖加多思吉弖 比登里可 母祢牟
[訓読]夕されば 葦辺に騒き 明け来れば 沖になづさふ 鴨すらも 妻とたぐひて 我が 尾には 霜な降りそと 白栲の 羽さし交へて うち掃ひ さ寝とふものを 行く水の 帰ら ぬごとく 吹く風の 見えぬがごとく 跡もなき 世の人にして 別れにし 妹が着せてし なれ衣 袖片敷きて ひとりかも寝む
[仮名],ゆふされば,あしへにさわき,あけくれば,おきになづさふ,かもすらも,つまとた ぐひて,わがをには,しもなふりそと,しろたへの,はねさしかへて,うちはらひ,さぬとふ ものを,ゆくみづの,かへらぬごとく,ふくかぜの,みえぬがごとく,あともなき,よのひと にして,わかれにし,いもがきせてし,なれごろも,そでかたしきて,ひとりかもねむ
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[左注](右丹比大夫悽愴亡妻歌)
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[校異]歌 [西] 謌 / 露 → 路 [類][紀]
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[KW],遣新羅使,天平8年,年紀,挽歌,転用,古歌,作者:丹比大夫,笠麻呂,羈旅,悲別,望郷 ,広島,倉橋島