University of Virginia Library

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[題詞]

[原文]鳥音之 所聞海尓 高山麻 障所為而 奥藻麻 枕所為 <蛾>葉之 衣<谷>不服尓 不 知魚取 海之濱邊尓 浦裳無 所宿有人者 母父尓 真名子尓可有六 若を之 妻香有異六 思布 言傳八跡 家問者 家乎母不告 名問跡 名谷母不告 哭兒如 言谷不語 思鞆 悲物 者 世間有 <世間有>
[訓読]鳥が音の 聞こゆる海に 高山を 隔てになして 沖つ藻を 枕になし ひむし羽の 衣だに着ずに 鯨魚取り 海の浜辺に うらもなく 臥やせる人は 母父に 愛子にかあ らむ 若草の 妻かありけむ 思ほしき 言伝てむやと 家問へば 家をも告らず 名を問 へど 名だにも告らず 泣く子なす 言だにとはず 思へども 悲しきものは 世間にぞあ る 世間にぞある
[仮名],とりがねの,きこゆるうみに,たかやまを,へだてになして,おきつもを,まくらに なし,ひむしはの,きぬだにきずに,いさなとり,うみのはまへに,うらもなく,こやせるひ とは,おもちちに,まなごにかあらむ,わかくさの,つまかありけむ,おもほしき,ことつて むやと,いへとへば,いへをものらず,なをとへど,なだにものらず,なくこなす,ことだに とはず,おもへども,かなしきものは,よのなかにぞある,よのなかにぞある
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[左注](右九首)
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[元][天][類] / 浴 → 谷 [類] / <> → 世間有 [元][天]
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炭・