University of Virginia Library

3272

[題詞]

[原文]打延而 思之小野者 不遠 其里人之 標結等 聞手師日従 立良久乃 田付毛不知 居久乃 於久鴨不知 親<之> 己<之>家尚乎 草枕 客宿之如久 思空 不安物乎 嗟空 過之 不得物乎 天雲之 行莫々 蘆垣乃 思乱而 乱麻乃 麻笥乎無登 吾戀流 千重乃一重母 人 不令知 本名也戀牟 氣之緒尓為而
[訓読]うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その里人の 標結ふと 聞きてし日より 立 てらくの たづきも知らず 居らくの 奥処も知らず にきびにし 我が家すらを 草枕 旅寝のごとく 思ふそら 苦しきものを 嘆くそら 過ぐしえぬものを 天雲の ゆくらゆ くらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の をけをなみと 我が恋ふる 千重の一重も 人知れ ず もとなや恋ひむ 息の緒にして
[仮名],うちはへて,おもひしをのは,とほからぬ,そのさとびとの,しめゆふと,ききてし ひより,たてらくの,たづきもしらず,をらくの,おくかもしらず,にきびにし,わがいへす らを,くさまくら,たびねのごとく,おもふそら,くるしきものを,なげくそら,すぐしえぬ ものを,あまくもの,ゆくらゆくらに,あしかきの,おもひみだれて,みだれをの,をけをな みと,あがこふる,ちへのひとへも,ひとしれず,もとなやこひむ,いきのをにして
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[左注](右二首)
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[類] / <> → 之 [元][天] / 麻笥 [元][天][類] 司
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枕詞