University of Virginia Library

春相聞

1890

[題詞]春相聞

[原文]春<山> <友>鴬 鳴別 <眷>益間 思御吾
[訓読]春山の友鴬の泣き別れ帰ります間も思ほせ我れを
[仮名],はるやまの,ともうぐひすの,なきわかれ,かへりますまも,おもほせわれを
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]日野 → 山 [新校] / 犬 → 友 [類] / 春春 → 眷 [西(訂正)][細][京]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情,序詞

1891

[題詞]

[原文]冬隠 春開花 手折以 千遍限 戀渡鴨
[訓読]冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも
[仮名],ふゆこもり,はるさくはなを,たをりもち,ちたびのかぎり,こひわたるかも
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情

1892

[題詞]

[原文]春山 霧惑在 鴬 我益 物念哉
[訓読]春山の霧に惑へる鴬も我れにまさりて物思はめやも
[仮名],はるやまの,きりにまとへる,うぐひすも,われにまさりて,ものもはめやも
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情

1893

[題詞]

[原文]出見 向岡 本繁 開在花 不成不止
[訓読]出でて見る向ひの岡に本茂く咲きたる花のならずはやまじ
[仮名],いでてみる,むかひのをかに,もとしげく,さきたるはなの,ならずはやまじ
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,比喩,恋情

1894

[題詞]

[原文]霞發 春永日 戀暮 夜深去 妹相鴨
[訓読]霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆくに妹も逢はぬかも
[仮名],かすみたつ,はるのながひを,こひくらし,よもふけゆくに,いももあはぬかも
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

1895

[題詞]

[原文]春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹
[訓読]春さればまづさきくさの幸くあらば後にも逢はむな恋ひそ我妹
[仮名],はるされば,まづさきくさの,さきくあらば,のちにもあはむ,なこひそわぎも
[_]
[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情

1896

[題詞]

[原文]春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨
[訓読]春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも
[仮名],はるされば,しだりやなぎの,とををにも,いもはこころに,のりにけるかも
[_]
[左注]右柿本朝臣人麻呂歌集出
[_]
[校異]歌 [西] 謌
[_]
[KW],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情

1897

[題詞]寄鳥

[原文]春之在者 伯勞鳥之草具吉 雖不所見 吾者見<将遣> 君之當<乎>婆
[訓読]春さればもずの草ぐき見えずとも我れは見やらむ君があたりをば
[仮名],はるされば,もずのくさぐき,みえずとも,われはみやらむ,きみがあたりをば
[_]
[左注]
[_]
[校異]遣将 → 将遣 [元][矢][京] / <> → 乎 [元][類][紀]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1898

[題詞](寄鳥)

[原文]容鳥之 間無數鳴 春野之 草根乃繁 戀毛為鴨
[訓読]貌鳥の間なくしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも
[仮名],かほどりの,まなくしばなく,はるののの,くさねのしげき,こひもするかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,動物,恋情

1899

[題詞]寄花

[原文]春去者 宇乃花具多思 吾越之 妹我垣間者 荒来鴨
[訓読]春されば卯の花ぐたし我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも
[仮名],はるされば,うのはなぐたし,わがこえし,いもがかきまは,あれにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1900

[題詞](寄花)

[原文]梅花 咲散苑尓 吾将去 君之使乎 片待香花光
[訓読]梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてり
[仮名],うめのはな,さきちるそのに,われゆかむ,きみがつかひを,かたまちがてり
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1901

[題詞](寄花)

[原文]藤浪 咲春野尓 蔓葛 下夜之戀者 久雲在
[訓読]藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ
[仮名],ふぢなみの,さくはるののに,はふくずの,したよしこひば,ひさしくもあらむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情,忍び恋

1902

[題詞](寄花)

[原文]春野尓 霞棚引 咲花乃 如是成二手尓 不逢君可母
[訓読]春の野に霞たなびき咲く花のかくなるまでに逢はぬ君かも
[仮名],はるののに,かすみたなびき,さくはなの,かくなるまでに,あはぬきみかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情,恨み

1903

[題詞](寄花)

[原文]吾瀬子尓 吾戀良久者 奥山之 馬酔花之 今盛有
[訓読]我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり
[仮名],わがせこに,あがこふらくは,おくやまの,あしびのはなの,いまさかりなり
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1904

[題詞](寄花)

[原文]梅花 四垂柳尓 折雜 花尓供養者 君尓相可毛
[訓読]梅の花しだり柳に折り交へ花に供へば君に逢はむかも
[仮名],うめのはな,しだりやなぎに,をりまじへ,はなにそなへば,きみにあはむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1905

[題詞](寄花)

[原文]姫部思 咲野尓生 白管自 不知事以 所言之吾背
[訓読]をみなへし佐紀野に生ふる白つつじ知らぬこともち言はえし我が背
[仮名],をみなへし,さきのにおふる,しらつつじ,しらぬこともち,いはえしわがせ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,奈良,地名,植物,序詞

1906

[題詞](寄花)

[原文]梅花 吾者不令落 青丹吉 平城之人 来管見之根
[訓読]梅の花我れは散らさじあをによし奈良なる人も来つつ見るがね
[仮名],うめのはな,われはちらさじ,あをによし,ならなるひとも,きつつみるがね
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,枕詞

1907

[題詞](寄花)

[原文]如是有者 何如殖兼 山振乃 止時喪哭 戀良苦念者
[訓読]かくしあらば何か植ゑけむ山吹のやむ時もなく恋ふらく思へば
[仮名],かくしあらば,なにかうゑけむ,やまぶきの,やむときもなく,こふらくおもへば
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1908

[題詞]寄霜

[原文]春去者 水草之上尓 置霜乃 消乍毛我者 戀度鴨
[訓読]春されば水草の上に置く霜の消につつも我れは恋ひわたるかも
[仮名],はるされば,みくさのうへに,おくしもの,けにつつもあれは,こひわたるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1909

[題詞]寄霞

[原文]春霞 山棚引 欝 妹乎相見 後戀毳
[訓読]春霞山にたなびきおほほしく妹を相見て後恋ひむかも
[仮名],はるかすみ,やまにたなびき,おほほしく,いもをあひみて,のちこひむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情,季節

1910

[題詞](寄霞)

[原文]春霞 立尓之日従 至今日 吾戀不止 本之繁家波 [一云 片念尓指天]
[訓読]春霞立ちにし日より今日までに我が恋やまず本の繁けば [一云 片思にして]
[仮名],はるかすみ,たちにしひより,けふまでに,あがこひやまず,もとのしげけば,[かた もひにして]
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1911

[題詞](寄霞)

[原文]左丹頬經 妹乎念登 霞立 春日毛晩尓 戀度可母
[訓読]さ丹つらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも
[仮名],さにつらふ,いもをおもふと,かすみたつ,はるひもくれに,こひわたるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]母 [元][類](塙) 毛
[_]
[KW],春相聞,恋情,季節

1912

[題詞](寄霞)

[原文]霊寸春 吾山之於尓 立霞 雖立雖座 君之随意
[訓読]たまきはる我が山の上に立つ霞立つとも居とも君がまにまに
[仮名],たまきはる,わがやまのうへに,たつかすみ,たつともうとも,きみがまにまに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,枕詞,序詞,恋情

1913

[題詞](寄霞)

[原文]見渡者 春日之野邊 立霞 見巻之欲 君之容儀香
[訓読]見わたせば春日の野辺に立つ霞見まくの欲しき君が姿か
[仮名],みわたせば,かすがののへに,たつかすみ,みまくのほしき,きみがすがたか
[_]
[左注]
[_]
[校異]邊 [西(右書)] 邊尓
[_]
[KW],春相聞,奈良,地名,恋情

1914

[題詞](寄霞)

[原文]戀乍毛 今日者暮都 霞立 明日之春日乎 如何将晩
[訓読]恋ひつつも今日は暮らしつ霞立つ明日の春日をいかに暮らさむ
[仮名],こひつつも,けふはくらしつ,かすみたつ,あすのはるひを,いかにくらさむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1915

[題詞]寄雨

[原文]吾背子尓 戀而為便莫 春雨之 零別不知 出而来可聞
[訓読]我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降るわき知らず出でて来しかも
[仮名],わがせこに,こひてすべなみ,はるさめの,ふるわきしらず,いでてこしかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1916

[題詞](寄雨)

[原文]今更 君者伊不徃 春雨之 情乎人之 不知有名國
[訓読]今さらに君はい行かじ春雨の心を人の知らずあらなくに
[仮名],いまさらに,きみはいゆかじ,はるさめの,こころをひとの,しらずあらなくに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1917

[題詞](寄雨)

[原文]春雨尓 衣甚 将通哉 七日四零者 七<日>不来哉
[訓読]春雨に衣はいたく通らめや七日し降らば七日来じとや
[仮名],はるさめに,ころもはいたく,とほらめや,なぬかしふらば,なぬかこじとや
[_]
[左注]
[_]
[校異]夜 → 日 [元][類][紀]
[_]
[KW],春相聞,恋情,雨隠り

1918

[題詞](寄雨)

[原文]梅花 令散春雨 多零 客尓也君之 廬入西留良武
[訓読]梅の花散らす春雨いたく降る旅にや君が廬りせるらむ
[仮名],うめのはな,ちらすはるさめ,いたくふる,たびにやきみが,いほりせるらむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情,雨隠り

1919

[題詞]寄草

[原文]國栖等之 春菜将採 司馬乃野之 數君麻 思比日
[訓読]国栖らが春菜摘むらむ司馬の野のしばしば君を思ふこのころ
[仮名],くにすらが,はるなつむらむ,しまののの,しばしばきみを,おもふこのころ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,吉野,地名,植物,恋情

1920

[題詞](寄草)

[原文]春草之 繁吾戀 大海 方徃浪之 千重積
[訓読]春草の繁き我が恋大海の辺に行く波の千重に積もりぬ
[仮名],はるくさの,しげきあがこひ,おほうみの,へにゆくなみの,ちへにつもりぬ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1921

[題詞](寄草)

[原文]不明 公乎相見而 菅根乃 長春日乎 孤<悲>渡鴨
[訓読]おほほしく君を相見て菅の根の長き春日を恋ひわたるかも
[仮名],おほほしく,きみをあひみて,すがのねの,ながきはるひを,こひわたるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]戀 → 悲 [元][類][紀]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1922

[題詞]寄松

[原文]梅花 咲而落去者 吾妹乎 将来香不来香跡 吾待乃木曽
[訓読]梅の花咲きて散りなば我妹子を来むか来じかと我が松の木ぞ
[仮名],うめのはな,さきてちりなば,わぎもこを,こむかこじかと,わがまつのきぞ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1923

[題詞]寄雲

[原文]白檀弓 今春山尓 去雲之 逝哉将別 戀敷物乎
[訓読]白真弓今春山に行く雲の行きや別れむ恋しきものを
[仮名],しらまゆみ,いまはるやまに,ゆくくもの,ゆきやわかれむ,こほしきものを
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,枕詞,恋情,序詞

1924

[題詞]贈蘰

[原文]大夫之 伏居嘆而 造有 四垂柳之 蘰為吾妹
[訓読]大夫の伏し居嘆きて作りたるしだり柳のかづらせ我妹
[仮名],ますらをの,ふしゐなげきて,つくりたる,しだりやなぎの,かづらせわぎも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情

1925

[題詞]<悲>別

[原文]朝戸出乃 君之儀乎 曲不見而 長春日乎 戀八九良三
[訓読]朝戸出の君が姿をよく見ずて長き春日を恋ひや暮らさむ
[仮名],あさとでの,きみがすがたを,よくみずて,ながきはるひを,こひやくらさむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]非 → 悲 [西(訂正)][元][紀][矢]
[_]
[KW],春相聞,恋情

1926

[題詞](問答)

[原文]春山之 馬酔花之 不悪 公尓波思恵也 所因友好
[訓読]春山の馬酔木の花の悪しからぬ君にはしゑや寄そるともよし
[仮名],はるやまの,あしびのはなの,あしからぬ,きみにはしゑや,よそるともよし
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,序詞,恋情

1927

[題詞](問答)

[原文]石上 振乃神杉 神備<西> 吾八更々 戀尓相尓家留
[訓読]石上布留の神杉神びにし我れやさらさら恋にあひにける
[仮名],いそのかみ,ふるのかむすぎ,かむびにし,われやさらさら,こひにあひにける
[_]
[左注]右一首不有春歌而猶以和故載於茲次
[_]
[校異]而 → 西 [元][類] / 歌 [西] 謌
[_]
[KW],春相聞,奈良,地名,植物,恋情

1928

[題詞](問答)

[原文]狭野方波 實尓雖不成 花耳 開而所見社 戀之名草尓
[訓読]さのかたは実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに
[仮名],さのかたは,みにならずとも,はなのみに,さきてみえこそ,こひのなぐさに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情,問答

1929

[題詞](問答)

[原文]狭野方波 實尓成西乎 今更 春雨零而 花将咲八方
[訓読]さのかたは実になりにしを今さらに春雨降りて花咲かめやも
[仮名],さのかたは,みになりにしを,いまさらに,はるさめふりて,はなさかめやも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,植物,恋情,問答

1930

[題詞](問答)

[原文]梓弓 引津邊有 莫告藻之 花咲及二 不會君毳
[訓読]梓弓引津の辺なるなのりその花咲くまでに逢はぬ君かも
[仮名],あづさゆみ,ひきつのへなる,なのりその,はなさくまでに,あはぬきみかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,福岡県,地名,植物,恋情,問答

1931

[題詞](問答)

[原文]川上之 伊都藻之花乃 何時々々 来座吾背子 時自異目八方
[訓読]川の上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも
[仮名],かはのうへの,いつものはなの,いつもいつも,きませわがせこ,ときじけめやも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,序詞,植物,恋情,問答

1932

[題詞](問答)

[原文]春雨之 不止零々 吾戀 人之目尚矣 不令相見
[訓読]春雨のやまず降る降る我が恋ふる人の目すらを相見せなくに
[仮名],はるさめの,やまずふるふる,あがこふる,ひとのめすらを,あひみせなくに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情,問答

1933

[題詞](問答)

[原文]吾妹子尓 戀乍居者 春雨之 彼毛知如 不止零乍
[訓読]我妹子に恋ひつつ居れば春雨のそれも知るごとやまず降りつつ
[仮名],わぎもこに,こひつつをれば,はるさめの,それもしるごと,やまずふりつつ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情,問答

1934

[題詞](問答)

[原文]相不念 妹哉本名 菅根乃 長春日乎 念晩牟
[訓読]相思はぬ妹をやもとな菅の根の長き春日を思ひ暮らさむ
[仮名],あひおもはぬ,いもをやもとな,すがのねの,ながきはるひを,おもひくらさむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,恋情,問答,植物

1935

[題詞](問答)

[原文]春去者 先鳴鳥乃 鴬之 事先立之 君乎之将待
[訓読]春さればまづ鳴く鳥の鴬の言先立ちし君をし待たむ
[仮名],はるされば,まづなくとりの,うぐひすの,ことさきだちし,きみをしまたむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,動物,恋情,問答

1936

[題詞](問答)

[原文]相不念 将有兒故 玉緒 長春日乎 念晩久
[訓読]相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緒の長き春日を思ひ暮らさく
[仮名],あひおもはず,あるらむこゆゑ,たまのをの,ながきはるひを,おもひくらさく
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],春相聞,問答,恋情