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挽歌
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挽歌

1795

[題詞]宇治若郎子宮所歌一首

[原文]妹等許 今木乃嶺 茂立 嬬待木者 古人見祁牟
[訓読]妹らがり今木の嶺に茂り立つ嬬松の木は古人見けむ
[仮名],いもらがり,いまきのみねに,しげりたつ,つままつのきは,ふるひとみけむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,宇治若郎子,京都,宇治,植物

1796

[題詞]紀伊國作歌四首

[原文]黄葉之 過去子等 携 遊礒麻 見者悲裳
[訓読]黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし礒を見れば悲しも
[仮名],もみちばの,すぎにしこらと,たづさはり,あそびしいそを,みればかなしも
[_]
[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,恋情,亡妻,非略体,地名

1797

[題詞](紀伊國作歌四首)

[原文]塩氣立 荒礒丹者雖在 徃水之 過去妹之 方見等曽来
[訓読]潮気立つ荒礒にはあれど行く水の過ぎにし妹が形見とぞ来し
[仮名],しほけたつ,ありそにはあれど,ゆくみづの,すぎにしいもが,かたみとぞこし
[_]
[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,亡妻,非略体,地名

1798

[題詞](紀伊國作歌四首)

[原文]古家丹 妹等吾見 黒玉之 久漏牛方乎 見佐府<下>
[訓読]いにしへに妹と我が見しぬばたまの黒牛潟を見れば寂しも
[仮名],いにしへに,いもとわがみし,ぬばたまの,くろうしがたを,みればさぶしも
[_]
[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]下玉 → 下 [西(朱訂正)][元][藍][類]
[_]
[KW],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,恋情,亡妻,非略体,地名

1799

[題詞](紀伊國作歌四首)

[原文]<玉>津嶋 礒之裏<未>之 真名<子>仁文 尓保比去名 妹觸險
[訓読]玉津島礒の浦廻の真砂にもにほひて行かな妹も触れけむ
[仮名],たまつしま,いそのうらみの,まなごにも,にほひてゆかな,いももふれけむ
[_]
[左注]右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出
[_]
[校異]<> → 玉 [西(左書)][元][藍][類] / 末 → 未 [元] / <> → 子 [紀] / 比 (塙) 比弖 (楓) 比尓
[_]
[KW],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,恋情,亡妻,非略体,地名

1800

[題詞]過足柄坂見死人作歌一首

[原文]小垣内之 麻矣引干 妹名根之 作服異六 白細乃 紐緒毛不解 一重結 帶矣三重 結 <苦>伎尓 仕奉而 今谷裳 國尓退而 父妣毛 妻矣毛将見跡 思乍 徃祁牟君者 鳥鳴 東國能 恐耶 神之三坂尓 和霊乃 服寒等丹 烏玉乃 髪者乱而 邦問跡 國矣毛不告 家問 跡 家矣毛不云 益荒夫乃 去能進尓 此間偃有
[訓読]小垣内の 麻を引き干し 妹なねが 作り着せけむ 白栲の 紐をも解かず 一重結 ふ 帯を三重結ひ 苦しきに 仕へ奉りて 今だにも 国に罷りて 父母も 妻をも見むと 思ひつつ 行きけむ君は 鶏が鳴く 東の国の 畏きや 神の御坂に 和妙の 衣寒らに ぬ ばたまの 髪は乱れて 国問へど 国をも告らず 家問へど 家をも言はず ますらをの 行 きのまにまに ここに臥やせる
[仮名],をかきつの,あさをひきほし,いもなねが,つくりきせけむ,しろたへの,ひもをも とかず,ひとへゆふ,おびをみへゆひ,くるしきに,つかへまつりて,いまだにも,くににま かりて,ちちははも,つまをもみむと,おもひつつ,ゆきけむきみは,とりがなく,あづまの くにの,かしこきや,かみのみさかに,にきたへの,ころもさむらに,ぬばたまの,かみはみ だれて,くにとへど,くにをものらず,いへとへど,いへをもいはず,ますらをの,ゆきのま にまに,ここにこやせる
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 苦侍 → 苦 [元][藍][類][紀]
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,行路死人,箱根,静岡,羈旅,鎮魂,地名,枕詞

1801

[題詞]過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌]

[原文]古之 益荒丁子 各競 妻問為祁牟 葦屋乃 菟名日處女乃 奥城矣 吾立見者 永世 乃 語尓為乍 後人 偲尓世武等 玉桙乃 道邊近 磐構 作冢矣 天雲乃 退部乃限 此道矣 去人毎 行因 射立嘆日 或人者 啼尓毛哭乍 語嗣 偲継来 處女等賀 奥城所 吾并 見者 悲喪 古思者
[訓読]古への ますら壮士の 相競ひ 妻問ひしけむ 葦屋の 菟原娘子の 奥城を 我が 立ち見れば 長き世の 語りにしつつ 後人の 偲ひにせむと 玉桙の 道の辺近く 岩構 へ 造れる塚を 天雲の そくへの極み この道を 行く人ごとに 行き寄りて い立ち嘆 かひ ある人は 哭にも泣きつつ 語り継ぎ 偲ひ継ぎくる 娘子らが 奥城処 我れさへに 見れば悲しも 古へ思へば
[仮名],いにしへの,ますらをとこの,あひきほひ,つまどひしけむ,あしのやの,うなひを とめの,おくつきを,わがたちみれば,ながきよの,かたりにしつつ,のちひとの,しのひに せむと,たまほこの,みちののへちかく,いはかまへ,つくれるつかを,あまくもの,そくへ のきはみ,このみちを,ゆくひとごとに,ゆきよりて,いたちなげかひ,あるひとは,ねにも なきつつ,かたりつぎ,しのひつぎくる,をとめらが,おくつきところ,われさへに,みれば かなしも,いにしへおもへば
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名

1802

[題詞](過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌])反歌

[原文]古乃 小竹田丁子乃 妻問石 菟會處女乃 奥城叙此
[訓読]古への信太壮士の妻問ひし菟原娘子の奥城ぞこれ
[仮名],いにしへの,しのだをとこの,つまどひし,うなひをとめの,おくつきぞこれ
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名

1803

[題詞]((過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌])反歌)

[原文]語継 可良仁文幾許 戀布矣 直目尓見兼 古丁子
[訓読]語り継ぐからにもここだ恋しきを直目に見けむ古へ壮士
[仮名],かたりつぐ,からにもここだ,こほしきを,ただめにみけむ,いにしへをとこ
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名

1804

[題詞]哀弟死去作歌一首[并短歌]

[原文]父母賀 成乃任尓 箸向 弟乃命者 朝露乃 銷易杵壽 神之共 荒競不勝而 葦原乃 水穂之國尓 家無哉 又還不来 遠津國 黄泉乃界丹 蔓都多乃 各<々>向々 天雲乃 別 石徃者 闇夜成 思迷匍匐 所射十六乃 意矣痛 葦垣之 思乱而 春鳥能 啼耳鳴乍 味澤相 宵晝不<知> 蜻蜒火之 心所燎管 悲悽別焉
[訓読]父母が 成しのまにまに 箸向ふ 弟の命は 朝露の 消やすき命 神の共 争ひか ねて 葦原の 瑞穂の国に 家なみか また帰り来ぬ 遠つ国 黄泉の境に 延ふ蔦の おの が向き向き 天雲の 別れし行けば 闇夜なす 思ひ惑はひ 射ゆ鹿の 心を痛み 葦垣の 思ひ乱れて 春鳥の 哭のみ泣きつつ あぢさはふ 夜昼知らず かぎろひの 心燃えつつ 嘆く別れを
[仮名],ちちははが,なしのまにまに,はしむかふ,おとのみことは,あさつゆの,けやすき いのち,かみのむた,あらそひかねて,あしはらの,みづほのくにに,いへなみか,またかへ りこぬ,とほつくに,よみのさかひに,はふつたの,おのがむきむき,あまくもの,わかれし ゆけば,やみよなす,おもひまとはひ,いゆししの,こころをいたみ,あしかきの,おもひみ だれて,はるとりの,ねのみなきつつ,あぢさはふ,よるひるしらず,かぎろひの,こころも えつつ,なげくわかれを
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 各 → 々 [元 ][藍][類][紀] / 云 → 知 [元][藍] (楓) 云
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆,枕詞

1805

[題詞](哀弟死去作歌一首[并短歌])反歌

[原文]別而裳 復毛可遭 所念者 心乱 吾戀目八方 [一云 意盡而]
[訓読]別れてもまたも逢ふべく思ほえば心乱れて我れ恋ひめやも [一云 心尽して]
[仮名],わかれても,またもあふべく,おもほえば,こころみだれて,あれこひめやも,[ここ ろつくして]
[_]
[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆

1806

[題詞]((哀弟死去作歌一首[并短歌])反歌)

[原文]蘆桧木笶 荒山中尓 送置而 還良布見者 情苦喪
[訓読]あしひきの荒山中に送り置きて帰らふ見れば心苦しも
[仮名],あしひきの,あらやまなかに,おくりおきて,かへらふみれば,こころぐるしも
[_]
[左注]右七首田邊福麻呂之歌集出
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆,枕詞

1807

[題詞]詠勝鹿真間娘子歌一首[并短歌]

[原文]鶏鳴 吾妻乃國尓 古昔尓 有家留事登 至今 不絶言来 勝<壮>鹿乃 真間乃手兒 奈我 麻衣尓 青衿著 直佐麻乎 裳者織服而 髪谷母 掻者不梳 履乎谷 不著雖行 錦綾之 中丹L有 齊兒毛 妹尓将及哉 望月之 満有面輪二 如花 咲而立有者 夏蟲乃 入火之 如 水門入尓 船己具如久 歸香具礼 人乃言時 幾時毛 不生物<呼> 何為跡歟 身乎田名 知而 浪音乃 驟湊之 奥津城尓 妹之臥勢流 遠代尓 有家類事乎 昨日霜 将見我其登毛 所念可聞
[訓読]鶏が鳴く 東の国に 古へに ありけることと 今までに 絶えず言ひける 勝鹿の 真間の手児名が 麻衣に 青衿着け ひたさ麻を 裳には織り着て 髪だにも 掻きは梳 らず 沓をだに はかず行けども 錦綾の 中に包める 斎ひ子も 妹にしかめや 望月の 足れる面わに 花のごと 笑みて立てれば 夏虫の 火に入るがごと 港入りに 舟漕ぐご とく 行きかぐれ 人の言ふ時 いくばくも 生けらじものを 何すとか 身をたな知りて 波の音の 騒く港の 奥城に 妹が臥やせる 遠き代に ありけることを 昨日しも 見け むがごとも 思ほゆるかも
[仮名],とりがなく,あづまのくにに,いにしへに,ありけることと,いままでに,たえずい ひける,かつしかの,ままのてごなが,あさぎぬに,あをくびつけ,ひたさをを,もにはおり きて,かみだにも,かきはけづらず,くつをだに,はかずゆけども,にしきあやの,なかにつ つめる,いはひこも,いもにしかめや,もちづきの,たれるおもわに,はなのごと,ゑみてた てれば,なつむしの,ひにいるがごと,みなといりに,ふねこぐごとく,ゆきかぐれ,ひとの いふとき,いくばくも,いけらじものを,なにすとか,みをたなしりて,なみのおとの,さわ くみなとの,おくつきに,いもがこやせる,とほきよに,ありけることを,きのふしも,みけ むがごとも,おもほゆるかも
[_]
[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 牡 → 壮 [元 ][藍][類][紀] / 乎 → 呼 [元][藍][類]
[_]
[KW],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,葛飾,東京,伝説,自殺,惜別,枕詞,地名

1808

[題詞](詠勝鹿真間娘子歌一首[并短歌])反歌

[原文]勝<壮>鹿之 真間之井見者 立平之 水は家<武> 手兒名之所念
[訓読]勝鹿の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ
[仮名],かつしかの,ままのゐみれば,たちならし,みづくましけむ,てごなしおもほゆ
[_]
[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 → 壮 [元][古][類][紀] / 牟 → 武 [元][藍][類][紀]
[_]
[KW],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,葛飾,東京,伝説,自殺,惜別,地名

1809

[題詞]見菟原處女墓歌一首[并短歌]

[原文]葦屋之 菟名負處女之 八年兒之 片生之時従 小放尓 髪多久麻弖尓 並居 家尓 毛不所見 虚木綿乃 牢而座在者 見而師香跡 <悒>憤時之 垣廬成 人之誂時 智<弩><壮 >士 宇奈比<壮>士乃 廬八燎 須酒師競 相結婚 為家類時者 焼大刀乃 手頴押祢利 白 檀弓 <靫>取負而 入水 火尓毛将入跡 立向 競時尓 吾妹子之 母尓語久 倭<文>手纒 賎 吾之故 大夫之 荒争見者 雖生 應合有哉 <宍>串呂 黄泉尓将待跡 隠沼乃 下延置而 打 歎 妹之去者 血沼<壮>士 其夜夢見 取次寸 追去祁礼婆 後有 菟原<壮>士伊 仰天 S於 良妣 ひ地 牙喫建怒而 如己男尓 負而者不有跡 懸佩之 小劔取佩 冬ふ蕷都良 尋去祁 礼婆 親族共 射歸集 永代尓 標将為跡 遐代尓 語将継常 處女墓 中尓造置 <壮>士墓 此方彼方二 造置有 故縁聞而 雖不知 新喪之如毛 哭泣鶴鴨
[訓読]葦屋の 菟原娘子の 八年子の 片生ひの時ゆ 小放りに 髪たくまでに 並び居る 家にも見えず 虚木綿の 隠りて居れば 見てしかと いぶせむ時の 垣ほなす 人の問 ふ時 茅渟壮士 菟原壮士の 伏屋焚き すすし競ひ 相よばひ しける時は 焼太刀の 手 かみ押しねり 白真弓 靫取り負ひて 水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競ひし時に 我妹子が 母に語らく しつたまき いやしき我が故 ますらをの 争ふ見れば 生けりと も 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉に待たむと 隠り沼の 下延へ置きて うち嘆き 妹が去ぬれば 茅渟壮士 その夜夢に見 とり続き 追ひ行きければ 後れたる 菟原壮士 い 天仰ぎ 叫びおらび 地を踏み きかみたけびて もころ男に 負けてはあらじと 懸け 佩きの 小太刀取り佩き ところづら 尋め行きければ 親族どち い行き集ひ 長き代に 標にせむと 遠き代に 語り継がむと 娘子墓 中に造り置き 壮士墓 このもかのもに 造り置ける 故縁聞きて 知らねども 新裳のごとも 哭泣きつるかも
[仮名],あしのやの,うなひをとめの,やとせこの,かたおひのときゆ,をばなりに,かみた くまでに,ならびをる,いへにもみえず,うつゆふの,こもりてをれば,みてしかと,いぶせ むときの,かきほなす,ひとのとふとき,ちぬをとこ,うなひをとこの,ふせやたき,すすし きほひ,あひよばひ,しけるときは,やきたちの,たかみおしねり,しらまゆみ,ゆきとりお ひて,みづにいり,ひにもいらむと,たちむかひ,きほひしときに,わぎもこが,ははにかた らく,しつたまき,いやしきわがゆゑ,ますらをの,あらそふみれば,いけりとも,あふべく あれや,ししくしろ,よみにまたむと,こもりぬの,したはへおきて,うちなげき,いもがい ぬれば,ちぬをとこ,そのよいめにみ,とりつづき,おひゆきければ,おくれたる,うなひを とこい,あめあふぎ,さけびおらび,つちをふみ,きかみたけびて,もころをに,まけてはあ らじと,かけはきの,をだちとりはき,ところづら,とめゆきければ,うがらどち,いゆきつ どひ,ながきよに,しるしにせむと,とほきよに,かたりつがむと,をとめはか,なかにつく りおき,をとこはか,このもかのもに,つくりおける,ゆゑよしききて,しらねども,にひも のごとも,ねなきつるかも
[_]
[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / は → 悒 [元 ][藍][紀] / 奴 → 弩 [元][藍] / 牡 → 壮 [元][藍][類] / 靭 → 靫 [元][藍] / 父 → 文 [元][紀] / 完 → 宍 [元][藍] / 牡 → 壮 [元][藍][類] / 牡 → 壮 [元][藍][類] / 牡 → 壮 [元][藍][類]
[_]
[KW],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名

1810

[題詞](見菟原處女墓歌一首[并短歌])反歌

[原文]葦屋之 宇奈比處女之 奥槨乎 徃来跡見者 哭耳之所泣
[訓読]芦屋の菟原娘子の奥城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ
[仮名],あしのやの,うなひをとめの,おくつきを,ゆきくとみれば,ねのみしなかゆ
[_]
[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名

1811

[題詞]((見菟原處女墓歌一首[并短歌])反歌)

[原文]墓上之 木枝靡有 如聞 陳努<壮>士尓之 <依>家良信母
[訓読]墓の上の木の枝靡けり聞きしごと茅渟壮士にし寄りにけらしも
[仮名],はかのうへの,このえなびけり,ききしごと,ちぬをとこにし,よりにけらしも
[_]
[左注]右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出
[_]
[校異]牡 → 壮 [元][藍][類] / 依倍 → 依 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[_]
[KW],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名