みだれ髪 (Midaregami) | ||
舞姫
人に侍る大堰の水のおばしまにわかきうれひの袂の長き
289
くれなゐの扇に惜しき涙なりき嵯峨のみぢか夜曉寒かりし
290
朝を細き雨に小鼓おほひゆくだんだら染の袖ながき君
291
人にそひて今日京の子の歌をきく祇園清水春の山まろき
292
くれなゐの襟にはさめる舞扇醉のすさびのあととめられな
293
桃われの前髪ゆへるくみ紐やときいろなるがことたらぬかな
294
淺黄地に扇ながしの都染九尺のしごき袖よりも長き
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四條橋おしろいあつき舞姫のぬかささやかに撲つ夕あられ
296
さしかざす小傘に紅き揚羽蝶小褄とる手に雪ちりかかる
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舞姫のかりね姿ようつくしき朝京くだる春の川舟
298
紅梅に金糸のぬひの菊づくし五枚かさねし襟なつかしき
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舞ぎぬの袂に聲をおほひけりここのみ闇の春の廻廊
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まこと人を打たれむものかふりあげし袂このまま夜をなに舞はむ
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三たび四たびおなじしらべの京の四季おとどの君をつらしと思ひぬ
302
あでびとの御膝へおぞやおとしけり行幸源氏の卷繪の小櫛
303
しろがねの舞の花櫛おもくしてかへす袂のままならぬかな
304
四とせまへ皷うつ手にそそがせし涙のぬしに逢はれむ我か
305
おほづつみ抱えかねたるその頃よ美き衣きるをうれしと思ひし
306
われなれぬ千鳥なく夜の川かぜに皷拍子をとりて行くまで
307
いもうとの琴には惜しきおぼろ夜よ京の子こひし皷のひと手
308
よそほひし京の子すゑて絹のべて繪の具とく夜を春の雨ふる
309
そのなさけ今日舞姫に強ひますか西の秀才が眉よやつれし
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