みだれ髪 (Midaregami) | ||
小百合
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月の夜の蓮のおばしま君うつくしうら葉の御歌わすれはせずよ
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たけの髪をとめ二人に月うすき今宵しら蓮色まどはずや
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荷葉なかば誰にゆるすの上の御句ぞ御袖片取るわかき師の君
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おもひおもふ今のこころに分ち分かず君やしら萩われやしろ百合
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いづれ君ふるさと遠き人の世ぞと御手はなしは昨日の夕
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三たりをば世にうらぶれしはらからとわれ先づ云ひぬ西の京の宿
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今宵まくら神にゆづらぬやは手なりたがはせまさじ白百合の夢
182
夢にせめてせめてと思ひその神に小百合の露の歌ささやきぬ
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次のまのあま戸そとくるわれをよびて秋の夜いかに長きみぢかき
184
友のあしのつめたかりきと旅の朝わかきわが師に心なくいいひぬ
185
ひとまおきてをりをりもれし君がいきその夜しら梅だくと夢みし
186
いはず聽かずただうなづきて別れけりその日は六日二人と一人
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もろ羽かはし掩ひしそれも甲斐なかりきうつくしの友西の京の秋
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星となりて逢はむそれまで思ひ出でな一つふすまに聞きし秋の聲
189
人の世に才秀でたるわが友の名の末かなし今日秋くれぬ
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星の子のあまりによわし袂あげて魔にも鬼にも勝たむと云へな
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百合の花わざと魔の手に折らせおきて拾ひてだかむ神のこころか
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しろ百合はそれその人の高きおもひおもわは艶ふ紅芙蓉とこそ
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さはいへどそのひと時よまばゆかりき夏の野しめし白百合の花
194
友は二十ふたつこしたる我身なりふさはずあらじ戀と傳へむ
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その血潮ふたりは吐かぬちぎりなりき春を山蓼たづねますな君
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秋を三人椎の實なげし鯉やいづこ池の朝かぜ手と手つめたき
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かの空よ若狹は北よわれ載せて行く雲なきか西の京の山
198
ひと花はみづから渓にもとめきませ若狹の雪に堪へむ紅
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『筆のあとに山居のさまを知りたまへ』人への人の文さりげなき
200
京はもののつらきところと書きさして見おろしませる加茂の河しろき
201
恨みまつる湯におりしまの一人居を歌なかりきの君へだてあり
202
秋の衾あしたわびし身うらめしきつめたきためし春の京に得ぬ
203
わすれては谿へおりますうしろ影ほそき御肩に春の日よわき
204
京の鐘この日このとき我れあらずこの日このとき人と人を泣きぬ
205
琵琶の海山ごえ行かむいざと云ひし秋よ三人よ人そぞろなりし
206
京の水の深み見おろし秋を人の裂きし小指の血のあと寒き
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山蓼のそれよりふかきくれなゐは梅よはばかれ神にとがおはむ
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魔のまへに理想くだきしよわき子と友のゆふべをゆびさしますな
209
魔のわざを神のさだめと眼を閉ぢし友の片手の花あやぶみぬ
210
歌をかぞへその子この子にならふなのまだ寸ならぬ白百合の芽よ
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