University of Virginia Library

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[題詞]大伴坂上郎女従跡見庄<賜>留宅女子大嬢歌一首[并短歌]

[原文]常呼二跡 吾行莫國 小金門尓 物悲良尓 念有之 吾兒乃刀自緒 野干玉之 夜晝 跡不言 念二思 吾身者痩奴 嘆丹師 袖左倍<沾>奴 如是許 本名四戀者 古郷尓 此月期 呂毛 有勝益土
[訓読]常世にと 我が行かなくに 小金門に もの悲しらに 思へりし 我が子の刀自を ぬばたまの 夜昼といはず 思ふにし 我が身は痩せぬ 嘆くにし 袖さへ濡れぬ かくば かり もとなし恋ひば 故郷に この月ごろも 有りかつましじ
[仮名],とこよにと,わがゆかなくに,をかなどに,ものかなしらに,おもへりし,あがこの とじを,ぬばたまの,よるひるといはず,おもふにし,あがみはやせぬ,なげくにし,そでさ へぬれぬ,かくばかり,もとなしこひば,ふるさとに,このつきごろも,ありかつましじ
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[左注](右歌報賜大嬢進歌也)
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[校異]贈賜 → 賜 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 沽 → 沾 [紀]
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[KW],相聞,作者:坂上郎女,坂上大嬢,愛情,枕詞,桜井