万葉集 (Manyoshu) | ||
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[題詞]霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌]
[原文]梓弓 手取持而 大夫之 得物<矢>手<挾> 立向 高圓山尓 春野焼 野火登見左右
燎火乎 何如問者 玉桙之 道来人乃 泣涙 <W>X尓落者 白妙之 衣O漬而 立留 吾尓
語久 何鴨 本名言 聞者 泣耳師所哭 語者 心曽痛 天皇之 神之御子之 御駕之 手火之
光曽 幾許照而有
[訓読]梓弓 手に取り持ちて ますらをの さつ矢手挟み 立ち向ふ 高円山に 春野焼く
野火と見るまで 燃ゆる火を 何かと問へば 玉鉾の 道来る人の 泣く涙 こさめに降
れば 白栲の 衣ひづちて 立ち留まり 我れに語らく なにしかも もとなとぶらふ 聞
けば 哭のみし泣かゆ 語れば 心ぞ痛き 天皇の 神の御子の いでましの 手火の光り
ぞ ここだ照りたる
[仮名],あづさゆみ,てにとりもちて,ますらをの,さつやたばさみ,たちむかふ,たかまと
やまに,はるのやく,のびとみるまで,もゆるひを,なにかととへば,たまほこの,みちくる
ひとの,なくなみた,こさめにふれば,しろたへの,ころもひづちて,たちとまり,われにか
たらく,なにしかも,もとなとぶらふ,きけば,ねのみしなかゆ,かたれば,こころぞいたき
,すめろきの,かみのみこの,いでましの,たひのひかりぞ,ここだてりたる
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