University of Virginia Library

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[題詞]更贈歌一首[并短歌] / 含弘之徳垂恩蓬体不貲之思報慰陋心 載荷<来眷>無堪所喩 也 但以稚時不渉遊藝之庭 横翰之藻自乏<乎>彫蟲焉 幼年未逕山柿之門 裁歌之趣 詞 失<乎>聚林矣 爰辱以藤續錦之言更題将石間瓊之詠 <固>是俗愚懐癖 不能黙已 仍捧數 行式酬嗤咲其詞曰

[原文]於保吉民能 麻氣乃麻尓々々 之奈射加流 故之乎袁佐米尓 伊泥C許之 麻須良 和礼須良 余能奈可乃 都祢之奈家礼婆 宇知奈妣伎 登許尓己伊布之 伊多家苦乃 日異 麻世婆 可奈之家口 許己尓思出 伊良奈家久 曽許尓念出 奈氣久蘇良 夜須<家>奈久尓 於母布蘇良 久流之伎母能乎 安之比紀能 夜麻伎敝奈里C 多麻保許乃 美知能等保家 <婆> 間使毛 遣縁毛奈美 於母保之吉 許等毛可欲波受 多麻伎波流 伊能知乎之家登 勢牟須辨能 多騰吉乎之良尓 隠居而 念奈氣加比 奈具佐牟流 許己呂波奈之尓 春花 <乃> 佐家流左加里尓 於毛敷度知 多乎里可射佐受 波流乃野能 之氣美<登>妣久々 鴬 音太尓伎加受 乎登賣良我 春菜都麻須等 久礼奈為能 赤裳乃須蘇能 波流佐米尓 々保 比々豆知弖 加欲敷良牟 時盛乎 伊多豆良尓 須具之夜里都礼 思努波勢流 君之心乎 宇流波之美 此夜須我浪尓 伊母祢受尓 今日毛之賣良尓 孤悲都追曽乎流
[訓読]大君の 任けのまにまに しなざかる 越を治めに 出でて来し ますら我れすら 世間の 常しなければ うち靡き 床に臥い伏し 痛けくの 日に異に増せば 悲しけく ここに思ひ出 いらなけく そこに思ひ出 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきもの を あしひきの 山きへなりて 玉桙の 道の遠けば 間使も 遣るよしもなみ 思ほしき 言も通はず たまきはる 命惜しけど せむすべの たどきを知らに 隠り居て 思ひ嘆か ひ 慰むる 心はなしに 春花の 咲ける盛りに 思ふどち 手折りかざさず 春の野の 茂 み飛び潜く 鴬の 声だに聞かず 娘子らが 春菜摘ますと 紅の 赤裳の裾の 春雨に に ほひひづちて 通ふらむ 時の盛りを いたづらに 過ぐし遣りつれ 偲はせる 君が心を うるはしみ この夜すがらに 寐も寝ずに 今日もしめらに 恋ひつつぞ居る
[仮名],おほきみの,まけのまにまに,しなざかる,こしををさめに,いでてこし,ますらわ れすら,よのなかの,つねしなければ,うちなびき,とこにこいふし,いたけくの,ひにけに ませば,かなしけく,ここにおもひで,いらなけく,そこにおもひで,なげくそら,やすけな くに,おもふそら,くるしきものを,あしひきの,やまきへなりて,たまほこの,みちのとほ けば,まつかひも,やるよしもなみ,おもほしき,こともかよはず,たまきはる,いのちをし けど,せむすべの,たどきをしらに,こもりゐて,おもひなげかひ,なぐさむる,こころはな しに,はるはなの,さけるさかりに,おもふどち,たをりかざさず,はるののの,しげみとび くく,うぐひすの,こゑだにきかず,をとめらが,はるなつますと,くれなゐの,あかものす その,はるさめに,にほひひづちて,かよふらむ,ときのさかりを,いたづらに,すぐしやり つれ,しのはせる,きみがこころを,うるはしみ,このよすがらに,いもねずに,けふもしめ らに,こひつつぞをる
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[左注](三月三日大伴宿祢家持)
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[校異]歌 [西] 謌 / 恩 [天](塙) 思 / 思 (塙) 恩 / 未春 → 来眷 [万葉集略解] / 于 → 乎 [元][紀][細] / 于 → 乎 [元][紀][細] / 因 → 固 [元] / 家久[西(右書)] → 家 [元][紀] / 波 → 婆 [元] / 之 → 乃 [元][細] / 豆 → 登 [元][紀]
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[KW],天平19年3月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,,書簡,枕詞,動物,恋情 ,悲嘆,高岡,富山