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[題詞]忽見入京述懐之作生別悲<兮>断腸万廻怨緒難禁聊奉所心一首并二絶
[原文]安遠邇与之 奈良乎伎波奈礼 阿麻射可流 比奈尓波安礼登 和賀勢故乎 見都追
志乎礼婆 於毛比夜流 許等母安利之乎 於保伎美乃 美許等可之古美 乎須久尓能 許等
登理毛知弖 和可久佐能 安由比多豆久利 無良等理能 安佐太知伊奈婆 於久礼多流 阿
礼也可奈之伎 多妣尓由久 伎美可母孤悲無 於毛布蘇良 夜須久安良祢婆 奈氣可久乎
等騰米毛可祢C 見和多勢婆 宇能婆奈夜麻乃 保等登藝須 <祢>能未之奈可由 安佐疑
理能 美太流々許己呂 許登尓伊泥弖 伊<波><婆>由遊思美 刀奈美夜麻 多牟氣能可味尓
奴佐麻都里 安我許比能麻久 波之家夜之 吉美賀多太可乎 麻佐吉久毛 安里多母等保
利 都奇多々婆 等伎毛可波佐受 奈泥之故我 波奈乃佐可里尓 阿比見之米等曽
[訓読]あをによし 奈良を来離れ 天離る 鄙にはあれど 我が背子を 見つつし居れば
思ひ遣る こともありしを 大君の 命畏み 食す国の 事取り持ちて 若草の 足結ひ手
作り 群鳥の 朝立ち去なば 後れたる 我れや悲しき 旅に行く 君かも恋ひむ 思ふそ
ら 安くあらねば 嘆かくを 留めもかねて 見わたせば 卯の花山の 霍公鳥 音のみし泣
かゆ 朝霧の 乱るる心 言に出でて 言はばゆゆしみ 砺波山 手向けの神に 幣奉り 我
が祈ひ祷まく はしけやし 君が直香を ま幸くも ありた廻り 月立たば 時もかはさず
なでしこが 花の盛りに 相見しめとぞ
[仮名],あをによし,ならをきはなれ,あまざかる,ひなにはあれど,わがせこを,みつつし
をれば,おもひやる,こともありしを,おほきみの,みことかしこみ,をすくにの,こととり
もちて,わかくさの,あゆひたづくり,むらとりの,あさだちいなば,おくれたる,あれやか
なしき,たびにゆく,きみかもこひむ,おもふそら,やすくあらねば,なげかくを,とどめも
かねて,みわたせば,うのはなやまの,ほととぎす,ねのみしなかゆ,あさぎりの,みだるる
こころ,ことにいでて,いはばゆゆしみ,となみやま,たむけのかみに,ぬさまつり,あがこ
ひのまく,はしけやし,きみがただかを,まさきくも,ありたもとほり,つきたたば,ときも
かはさず,なでしこが,はなのさかりに,あひみしめとぞ
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[左注](右大伴宿祢池主報贈和歌 [五月二日])
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[校異]号 → 兮 [元] / 弥 → 祢 [元][紀][細] / 婆 → 波 [元][細][温] / 々 → 婆
[元][細][温]
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[KW],天平19年5月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,枕詞,植物,動物,地名
,高岡,富山,砺波,恋情,悲別,羈旅,出発