万葉集 (Manyoshu) | ||
4006
[題詞]入京漸近悲情難撥述懐一首并一絶
[原文]可伎加蘇布 敷多我美夜麻尓 可牟佐備弖 多C流都我能奇 毛等母延毛 於夜自
得伎波尓 波之伎与之 和我世乃伎美乎 安佐左良受 安比弖許登騰比 由布佐礼婆 手多
豆佐波利弖 伊美豆河波 吉欲伎可布知尓 伊泥多知弖 和我多知弥礼婆 安由能加是 伊
多久之布氣婆 美奈刀尓波 之良奈美多可弥 都麻欲夫等 須騰理波佐和久 安之可流等
安麻乃乎夫祢波 伊里延許具 加遅能於等多可之 曽己乎之毛 安夜尓登母志美 之努比
都追 安蘇夫佐香理乎 須賣呂伎能 乎須久尓奈礼婆 美許登母知 多知和可礼奈婆 於久
礼多流 吉民婆安礼騰母 多麻保許乃 美知由久和礼播 之良久毛能 多奈妣久夜麻乎 伊
波祢布美 古要敝奈利奈<婆> 孤悲之家久 氣乃奈我家牟曽 則許母倍婆 許己呂志伊多思
保等登藝須 許恵尓安倍奴久 多麻尓母我 手尓麻吉毛知弖 安佐欲比尓 見都追由可牟
乎 於伎弖伊加<婆>乎<思>
[訓読]かき数ふ 二上山に 神さびて 立てる栂の木 本も枝も 同じときはに はしきよ
し 我が背の君を 朝去らず 逢ひて言どひ 夕されば 手携はりて 射水川 清き河内に
出で立ちて 我が立ち見れば 東風の風 いたくし吹けば 港には 白波高み 妻呼ぶと 渚
鳥は騒く 葦刈ると 海人の小舟は 入江漕ぐ 楫の音高し そこをしも あやに羨しみ
偲ひつつ 遊ぶ盛りを 天皇の 食す国なれば 御言持ち 立ち別れなば 後れたる 君はあ
れども 玉桙の 道行く我れは 白雲の たなびく山を 岩根踏み 越えへなりなば 恋しけ
く 日の長けむぞ そこ思へば 心し痛し 霍公鳥 声にあへ貫く 玉にもが 手に巻き持ち
て 朝夕に 見つつ行かむを 置きて行かば惜し
[仮名],かきかぞふ,ふたがみやまに,かむさびて,たてるつがのき,もともえも,おやじと
きはに,はしきよし,わがせのきみを,あささらず,あひてことどひ,ゆふされば,てたづさ
はりて,いみづがは,きよきかふちに,いでたちて,わがたちみれば,あゆのかぜ,いたくし
ふけば,みなとには,しらなみたかみ,つまよぶと,すどりはさわく,あしかると,あまのを
ぶねは,いりえこぐ,かぢのおとたかし,そこをしも,あやにともしみ,しのひつつ,あそぶ
さかりを,すめろきの,をすくになれば,みこともち,たちわかれなば,おくれたる,きみは
あれども,たまほこの,みちゆくわれは,しらくもの,たなびくやまを,いはねふみ,こえへ
なりなば,こひしけく,けのながけむぞ,そこもへば,こころしいたし,ほととぎす,こゑに
あへぬく,たまにもが,てにまきもちて,あさよひに,みつつゆかむを,おきていかばをし
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