University of Virginia Library

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[題詞](乞食者<詠>二首)

[原文]忍照八 難波乃小江尓 廬作 難麻理弖居 葦河尓乎 王召跡 何為牟尓 吾乎召良 米夜 明久 <吾>知事乎 歌人跡 和乎召良米夜 笛吹跡 和乎召良米夜 琴引跡 和乎召良 米夜 彼<此>毛 <命>受牟跡 今日々々跡 飛鳥尓到 雖<置> <々>勿尓到 雖不策 都久怒 尓到 東 中門由 参納来弖 命受例婆 馬尓己曽 布毛太志可久物 牛尓己曽 鼻縄波久例 足引乃 此片山乃 毛武尓礼乎 五百枝波伎垂 天光夜 日乃異尓干 佐比豆留夜 辛碓尓 舂 庭立 <手>碓子尓舂 忍光八 難波乃小江乃 始垂乎 辛久垂来弖 陶人乃 所作龜乎 今 日徃 明日取持来 吾目良尓 塩と給 <セ>賞毛 <セ賞毛>
[訓読]おしてるや 難波の小江に 廬作り 隠りて居る 葦蟹を 大君召すと 何せむに 我を召すらめや 明けく 我が知ることを 歌人と 我を召すらめや 笛吹きと 我を召す らめや 琴弾きと 我を召すらめや かもかくも 命受けむと 今日今日と 飛鳥に至り 置くとも 置勿に至り つかねども 都久野に至り 東の 中の御門ゆ 参入り来て 命受 くれば 馬にこそ ふもだしかくもの 牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の も む楡を 五百枝剥き垂り 天照るや 日の異に干し さひづるや 韓臼に搗き 庭に立つ 手臼に搗き おしてるや 難波の小江の 初垂りを からく垂り来て 陶人の 作れる瓶を 今日行きて 明日取り持ち来 我が目らに 塩塗りたまひ きたひはやすも きたひはや すも
[仮名],おしてるや,なにはのをえに,いほつくり,なまりてをる,あしがにを,おほきみめ すと,なにせむに,わをめすらめや,あきらけく,わがしることを,うたひとと,わをめすら めや,ふえふきと,わをめすらめや,ことひきと,わをめすらめや,かもかくも,みことうけ むと,けふけふと,あすかにいたり,おくとも,おくなにいたり,つかねども,つくのにいた り,ひむがしの,なかのみかどゆ,まゐりきて,みことうくれば,うまにこそ,ふもだしかく もの,うしにこそ,はなづなはくれ,あしひきの,このかたやまの,もむにれを,いほえはき たり,あまてるや,ひのけにほし,さひづるや,からうすにつき,にはにたつ,てうすにつき ,おしてるや,なにはのをえの,はつたりを,からくたりきて,すゑひとの,つくれるかめを ,けふゆきて,あすとりもちき,わがめらに,しほぬりたまひ,きたひはやすも,きたひはや すも
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[左注]右歌一首為蟹述痛作之也
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[校異]若 → 吾 [尼][類][紀] / <> → 此 [万葉集古義] / 令 → 命 [尼][類] / 立 → 置 (塙) / 置 → 々 (塙) / <> → 手 [尼][類] / 時 → セ [尼][類] / 々々々 → セ賞毛 [尼][類][紀]
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[KW],雑歌,作者:乞食者,寿歌,歌謡,枕詞